田川伸一郎のブログ

岩手県の中学校・高校バンド

日曜日は、旭川から深夜に帰宅しましたが、月曜の朝は、ゆっくり寝坊する間もなく、早起きして旭川のブログを更新し、9時過ぎには岩手に向けて一泊の旅に出発しました。

開校記念日の休日で、午後一からレッスンを受けられるという中学校と、夕方から夜まで特別延長練習が出来るという高校からのご依頼でした。


岩手県へは、2月のはじめに一関での講習会にお招きいただいて以来のお伺いとなります。
今回の2校の先生方とは、その講習会での出会いでした。

岩手県の吹奏楽コンクールの地区大会は、今週末にスタートするそうです。
今回の2校も、その地区大会に出場します。

学校にお伺いしてから「コンクール直前」であることを知り、びっくり。
夏休みに入っての「追い込み」があたりまえになっている千葉県人の私には、慣れない感覚です。
でも、東北支部は、ほとんどの県で、最初の予選が一学期中に終わるそうです。

そして、「小編成の部」の人数規定は、岩手県でも、前年度の1.2年生部員の人数が、中学校20名、高校25名以内の学校は、「小編成の部」に出場できる資格があります。
出場人数の最大は、中学校25名、高校30名だそうです。
「東日本学校吹奏楽大会」の人数規定は、中学校も高校も30名なのですが、東北大会までは中学校は25名というのも不思議ですが...。

コンクールまであと6日という気合いの入った2校の練習を、精一杯お手伝いさせていただきました。


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この中学校は、規定どおり、「小編成の部」に出場できる部員数で、自由曲1曲のみを練習していました。
顧問の先生は、ピアノがご専門という音楽科ご担当の男性の先生です。
「吹奏楽」とは、現場に出られてから出会い、「わからないことだらけでしたので、猛勉強しました」とのことでした。
今では、バンド運営や楽器の指導も立派にされていらっしゃいます。

そして、先生とゆっくりお話しさせていただいたのは初めてでしたが、とても優しく、様々なことに配慮が出来る方で、疲れた身体で岩手入りした私を、とても温かく迎えてくださり、疲れがスーッと抜けたような気がしました。

教師である以前に、人間的にとても素敵なこの先生に導かれている中学生たちはどんな子たちなのだろうと、とても楽しみに伺わせていただきました。

練習室に入ると、すぐにこの生徒さんたちの「ほのぼの感」に、私もほっこりし、しばらくおしゃべりしてしまいました。
ちょっぴり緊張しているようでしたが、みんなニコニコ。 私の話のちょっと面白いところでは、みんなで大笑い。
やはり、思ったとおりでした。 顧問の先生の温かいお人柄、昼食をいただきながらお話しくださった子どもたちへの愛情、部活動に対する柔軟なものの考え方...まさに、そんな先生に愛されている子どもたちの姿でした。

レッスンでは、邦人作品の練り上げをお手伝いさせていただきました。

曲の持つメッセージ性、フレーズに託された作曲者の思い、巧みなオーケストレーションで彩られた色彩、情景描写の見事さ...そんな音楽の「内面」を、生徒さんたちと一緒に掘り起こしていきました。
技術的な練習を中心に、しっかりと組み立てられた演奏は、ちょっとした私の一言、皆の話し合い、歌ったり身体で表現したりという活動を通して、見事なほどに変容していきました。
少し力が入っていた(気合い?)サウンドも、とても柔らかい、広がりのあるサウンドになりました。

「楽器を演奏している」という演奏から、「楽器で歌っている」「楽器で語っている」という演奏に変わっていったことが、特にすばらしいかったと、私は思いました。

顧問の先生、見学されていた他校の先生も、「こんなに変わるものなんですね!」と、生徒さんたちの力に感激していました。

日頃からの「感性の陶冶」「人としての温もり」「音楽授業で育てられているのであろう音楽科の基礎学力」「部活動に向かう生徒たちの意気込み」...そういったものが、見事にリンクしたバンド活動に触れさせていただきました。
顧問の先生、生徒のみなさんに敬服です。

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お互いに初めてのレッスンでしたが、ずっと前から知り合いだったように、すぐに打ち解けて、僕の方をしっかり向いてくれた君たちでした。
君たちの「仲間」にしてもらえたことが、とてもうれしかったです。
いつもとは違うパターンの練習に、少し戸惑ったかもしれませんが、みんな慣れるのが早く、すぐについてくることができましたね。様々な発言の深さや広がりにも感心しました。
皆の学びで、演奏が物語になり、色や情景が見え、作品の良さがしみじみとわかりました。
コンクールですから、「結果」が出ます。 「結果」もとても大切だと思いますが、それ以上に大切な「吹奏楽部としての活動の仕方」、「吹奏楽を通して音楽を学ぶ姿勢」は、中学生として、大変立派な水準にあると思いました。
これからも、すばらしい顧問の先生のご指導の元、良い勉強を続けていってください。
もっともっと君たちと一緒に勉強したかったです。 またいつかきっと!




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続いてお伺いした「大編成の部」に出場する高校バンドです。
顧問の先生は、吹奏楽が大好きな国語科担当の男性の先生です。

校舎の別棟にある吹奏楽部の専用練習場でのレッスンでした。
音楽室ではなく、専用の練習場があるなんて! すごい、特別待遇! と思ったのですが、先生にお伺いしたところ、岩手県の県立高校で吹奏楽部がある学校には、どこでも原則としてこのような練習場(部室と呼んでいました)があるのだそうです。
うらやましい限りです。

音楽室で活動している学校では、放課後練習の後、「復元」と言って、翌日の授業のために、合奏のセッティングを崩し、机を授業用に並べてから帰る学校も少なくありません。
打楽器なども、音楽室とは別の部屋に保管してあり、練習の度に移動させる学校も多いです。
そんな手間もいらない専用の練習場がある岩手県! 何というすごい県なのでしょう。

こちらの「部室」は、段差がすごい階段教室になっていて、ちょっと使いづらそうでした。
打楽器も、その段に並べなければなりませんし、フロア部分が狭いので、木管も窮屈そうでした。
でも、この部屋は部員たちの「お城」なのです。

レッスンでは、課題曲と自由曲を通して聴かせていただきました。
高校生としては、レベルが高い演奏で、とても良くさらってありますし、皆の真剣さも伝わってきました。
特に、自由曲は、先生がお気に入りの曲のようで、生徒さんたちも先生の作りたい音楽を感じて演奏しているようでした。

それだけに、課題曲と自由曲の差が見えてしまい...残念。
課題曲は、『秘儀Ⅲ』です。 
「この曲をどう演奏したいのか、もっとメッセージを伝えてください。先生が!」と、先生にお伝えし、はじめのあたりを何度か演奏していただきましたが、指揮を見ていても、演奏する生徒さんたちを見ていても、「・・・」でした。

この曲を演奏している団体の多くに共通するのですが、「曲の力」「独特の音の響き」に頼り過ぎて、「この曲をこのように解釈し、見抜き、表現しています」というメッセージが無いのです。
それぞれの団体(というより、指揮者)によって、どんな演奏に「料理」されるのか、とても興味深い曲ですが、なかなか「そうか!そうやるか。なるほど!あぁそうか、スコアをそう読んだか。なるほど!」という指揮や指導にはなかなか出会えません。

どの団体でもさほど変わらない「普通の演奏」に聴こえてしまいます。

というわけで、コンクールは近いですが、先生の許可をいただいて、「たとえばこんな解釈もありますよ。田川はスコアをこのように読みましたよ。曲の秘密をこのように見抜き、それをこのように音楽表現に移行しますよ」ということを実演させていただきました。

時間が全く足りず、触れられなかったことも多かったのですが、この曲の「理論分析」も含めてお伝えさせていただきました。
スコアを読み込み、理屈がわかり、音符の持つ意図がわかると、この曲の味は全く変わってきます。
このバンドの優秀な生徒さんたちは、見事な理解と反応で、私が描いた『秘儀Ⅲ』の世界を奏でてくれました。

「皆さん、すばらしい演奏でした。でも、これは、あくまでも私の考えた『秘儀Ⅲ』なので、今日だけで忘れてください。皆さんは、顧問の先生のお考えをしっかり受け止めて作り上げてください」とお話しました。

先生は、「なるほど! 考える筋道が見えました!」と喜んでくださいました。
きっと先生らしい鋭いスコアの見取りと発想で、このバンドだけの個性的な『秘儀Ⅲ』を作り上げられることでしょう。

それにしても、この曲は、指揮者の「勉強」が試される曲だなとつくづく思います。
私も、勉強しても勉強しても、「ゴール」はほど遠い感じです。
新しいことが、常に見えてくるのです。
私が顧問だったら、きっとコンクール当日まで「昨日、また新しいことに気づいたんだけどさぁ、...」と、解釈が進化・深化して、生徒に迷惑をかけることだと思います。

課題曲だけでレッスン時間が終わり、自由曲は手付けずでしたが、私の拙いレッスンなど受けなくても、先生のご指導で、さらにすばらしい演奏に仕上がるに間違いないと確信しました。

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賢く、熱心で、「理論」や「理屈」の話にも興味を持って聞き入り、「感覚的なとらえ方」や「理屈ではなく身体でつかむ勉強」にもエネルギーを発散できる皆さん。
レッスンの中で、どんどんいい音、そして、いい顔になっていったことが、とても印象的でした。
恵まれた環境、熱心でやる気に満ち溢れたすばらしい顧問の先生の元で、一度しかない高校生活の日々を、大好きな吹奏楽に没頭できる皆さんがうらやましいです。
レッスン後に、楽譜を持って次々に質問に来る姿にも、自ら学ぶ意思を感じました。
顧問の先生が、どんな解釈で、どんな『秘儀Ⅲ』を作ろうとされるか、楽しみですね。
先生のお考えをしっかり理解して、世界にひとつしかない、君たちだけの『秘儀Ⅲ』の世界をコンクールで発表してください。
あぁ、先生と君たちの『秘儀Ⅲ』の完成した演奏を聴いてみたいです。 
またお伺い出来る日が来ますように...  



レッスンの後、顧問の先生がご自身の公開ブログに、こんな思いを綴ってくださいました。(一部を)

・・・・・
構築的な音楽の作り方と生徒の中に眠るエネルギーの取り出し方。違う角度から指導いただき、生徒の音も音楽も、目の輝きも見違えるほど変わりました。
そして、私には筵の上で鞭打たれるような厳しい痛みを感じるものでした。生徒たちの真の力を引き出して上げられない自分の不甲斐なさを痛感したからです。生徒はこんな短時間でも大きく変わる。たった一言でエネルギーが解放される。日々そのような指導をしていない自分こそがバンドの足を引っ張る存在ではないのか?そんなことを感じましたし、練習後の反省会でもいくつかの点ははっきりと「指揮者の責任である」と指摘されました。
しかし、その痛みは私を打ちのめすものではなく、文字通り叱咤激励として身に染みるものでした。こんな歳になった私を本気で叱って教えてくださる方がいると言うことは幸せなことです。もっともっと成長しろという期待の込められた言葉であると感じました。明日からもっともっと精進しよう。そう思える講師先生の言葉に、心から感謝します。今からでも生徒以上に必死に勉強します。
キーワードは「色」です。生徒にこのことをしっかりと伝えなくては。深みを伴った、色を感じる演奏を目指します。


「叱った」つもりなど毛頭ないのですが...ごめんなさい。
そうです。 「期待」です。 先生なら出来ます! がんばってくださいね!


素敵な出会いと勉強の機会を作ってくださった2校の先生方、共に「心の汗」を流してくれた生徒の皆さんに心から感謝いたします。
本当にありがとうございました。

コンクールでのご健闘を心からお祈り申し上げます。


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| | 2015-07-01(Wed)20:42 [編集]