田川伸一郎のブログ

千葉県の高校バンド~嵐のような出会い

昨日は、県内の高校バンドと新たな出会いをさせていただきました。

このバンドは、高等学校B部門で千葉県代表に選ばれた学校で、12日の東関東大会に出場が決まっています。

顧問の先生は、私のブログをご覧くださっており、同じB部門で躍進している鎌ヶ谷高校の記事などを目にされ、「自分の学校の生徒たちにも、東関東大会に向けて、勉強の機会を与えていただけないでしょうか」というご依頼をくださいました。

急なご依頼で、すでに、平日も空きがない状態だったのですが、「夜でも良いので...」と。
そこまで言ってくださる思いには応えなければと、昨日、夕方までの小学校レッスンを時間ぴったりに終わらせ、大急ぎで移動しました。

私の手元にスコアが届いたのが、3日前。
初めて見る曲でしたので、先日の神奈川県の小学校レッスンへの行き返りも、ずっとスコアを勉強していました。

なかなか「手ごわい曲」でした。
曲全体は、とてもシンプルな曲ですが、普通に演奏したのでは、「何が何だかわからない、何を聴いたらいいのかわからない、何を感じたらいいのかわからない」となってしまいそうな「部品」がとても多い曲でした。
先日の本選でこのバンドの演奏を聴かせていただいた時にも、「上手だけど、つかみどころがなく、ぐっと来ないのは、曲のせいなのかな?」と思っていました。
楽譜を見て、「やっぱり・・・」と思いました。

大切なコンクール直前に、初めてお伺いさせていただき、かえってご迷惑をおかけしては...と思いましたが、それならいっそのこと、「聴く側の立場に立った演奏」という視点でアドバイス差し上げればいいかなと居直りました。

バンドのカラーも、実情も、気質もわからず、また、生徒さんたちにとっては、私など名前も知らない「ただのオジサン」です。
有名な指導者や指揮者の方なら、きっと生徒さんたちも、テンション上げて迎えてくださるのでしょうが、「それ誰?」という私が伺うのですから、むしろ「客観的な立場」で聴き、アドバイスできるかなと思いました。

なので、スコアだけは、時間の限り分析して、「作曲者の意図」を読み砕いて出かけました。

レッスンは、初対面にもかかわらず、2時間限定です。
先生は、私のことを大げさに紹介してくださいましたが、生徒さんたちは、私の経歴や今の活動についてはあまり興味がなさそうで、「早く練習したい」という仕草をしていました。

それもそのはずです。
文化祭準備とコンクール練習を必死で両立させて、1分1秒無駄にしたくない今という時です。
私も、その気持ちがとてもよくわかりましたので、「先生、私の話はいつか時間のある時に。ともかく、すぐ練習しましょう」と、時間の流れを「練習」にもって行きました。

いつもでしたら、「出会いのお話」などで、むしろお願いして時間をいただくのですが、今回は違います。
私が誰であろうと、生徒さんたち、しかも高校生である彼ら彼女らには関係ないのです。
こういう出会いも、当然「有り」です。

大事なのは、与えられた時間の中で「音楽すること」、「学ぶこと」・・・それだけです。
ブログにアップさせていただこうとか、写真を撮らせていただこうとか、そうことを考える間もなく、音楽に没頭しました。

技術的には、とてもよくトレーニングされた演奏でした。
曲もよくこなしていますし、ピッチやリズム、ハーモニーなど基礎的なこともしっかりトレーニングされていました。
そして、情熱的に一生懸命演奏していました。
高校生の演奏レベルとしては、上級のバンドでした。

しかし、やはり、スコアの「構造」が見えない面が散見されていました。
演奏している側にはわかっているのでしょうが、この曲の「難しさ」が見えてしまっていました。

少し考え...

「皆さん、とても上手です。すばらしいと思います。なので、今日は、ここまで仕上がっている曲を違う味や見方で勉強してみませんか? いつもと違う表現になると思いますが...今日崩しても、明日はまた元に戻して良いのですから...」

生徒さんたちは、「?」という顔でした。
数名はうなずき、数名は下を向き、他の生徒さんたちはただ黙って私の顔を見つめていました。
先生の「お願いします!」の一言で決まり、私が指揮台に立って、どんどん指導させていただく運びになりました。

そこから約1時間45分ほど、「田川流解釈」の演奏をどんどん指導し込みました。
「明日になったら戻していいので、楽譜への書き込みはしないでください」とお願いしながら...

楽譜も置かず、全く暗譜で演奏している生徒さんに、「テヌートのついている音とついてない音の違いが、音楽の流れのスピード感に出ませんか?あなたの演奏は、全部テヌートに聴こえるんですが...」
えっ?というように、彼女はあわてて楽譜を見直していました。

他の金管がフォルテシモで鳴っている中で、フォルテで奏でられるトランペット...「あなたたちだけフォルテであることを知っていますか?皆と同じパワーと位置に聴こえます。あなたたちの動きは、少し遠くから聴こえてほしいからフォルテなのだと思います。遠近感がないと、皆の音がけんかしてごちゃごちゃに聴こえます。」

「ずっと♭系の調で進行し、♭系の調の中で転調してきたのが、この小節は、一気に♯系の調に転調します。♭系の調から♯系の調に転調した時には、明るさとか華やかさとか輝きとかがもっともっと出なければダメです。」

「同じフレーズの繰り返しをいつも同じように吹いていると、聴く人は飽きてきます。楽譜には書けない微妙な変化をつけてみましょう。たとえば...」

「フレーズのまとまりを、さらに大きく見渡して、ここから始まった音楽はどこへ向かうのか、その段階はどう構成されているのかを見渡して、それがわかるような強弱やスピード感の変化をつけて演奏してみましょう。大事なのは、聴いている人がわかる演奏をすることです。」

「ここは、楽譜は全部3/8拍子で書いてありますが、実際は、6/8拍子、12/8拍子、9/8拍子、そして、3/8拍子でフレーズが流れています。その拍子感がわかるようにしなければなりません。そのためにも、アウフタクトのエネルギーをもっと感じて一拍目に向かうこと。それぞれの拍子の持つ落ち着きや躍動を感じて、それと同時に音楽が変化していくことを聴いている人にわかるように伝えなければ。」

「そこの低音はしっかり立ち上げて、しっかり鳴らして。全体が入るまでのたった半拍分の間に、倍音がホールに響く位のことを目指さなければ。他の皆さんも、たった半拍しかない低音だけの音を大事にするために、八分休符を少したっぷり感じてから裏の拍の音を吹けますか?皆で倍音を聴きましょう。そして、休符をたっぷり取った分、吹き始めたら少し前に進んでつじつまを合わせましょう。伸びたら縮ませる、縮ませたら伸ばす、それがアゴーギクの原則です。」

・・・・・
次から次へと、解説と指示と演奏を繰り返す嵐のようなレッスンが続きました。

先生は私の横で、「うんうん、そうか。ああほんとだ、気づかなかった。なるほど...、ああ、そうだったのか...」と、納得しながら聴いてくださっていました。

生徒さんたちは、突風のように、今までと違うことをあれこれ言われ、面食らいながら、ひたすらついて来るのみ。
納得とか、共感とか、感動とか、そういう感じではなく、ただひたすら。
でも、ちゃんと付いてきたからすごい。
そして、音楽は、「しっかり型にはまった状態」から動き出しました。
スコアの構造も見えるようになりました。

こうして散々引っ掻き回したあげくに、「明日は、元に戻して演奏していいですからね!」と話す迷惑な私でした。

せっかく夜までのレッスンを設定していただいたのに、生徒さんたちが得たものはどれだけあったのか、自信がありません。
「何か感想はありますか?」と聞いても、ひとり残らず「しーん・・・」
うっ...撃沈でした。

嵐のようにやって来て、嵐のように去っていった、「謎のオジサン」でした。

みんな、ごめんね。 
でも、音楽って、おもしろいよね!
それがわかってくれたなら、うれしいです。

顧問の先生は、「先生!先生と生徒たちで写真を撮らせてください。」と、ご自分で写真をお撮りくださいました。
夜、それを送ってくださり、「よろしければ、ブログにアップしてください。生徒も楽しみにしていますので...」と。

あんな嵐のようなレッスン、迷惑じゃなかったのかなぁ。
でも、せっかく送ってくださった写真なので、恐縮ですが、アップさせていただきます。

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今度もし再びお伺いする機会があったら、その時には、もっとじっくり皆と会話しながら、ゆったりと音楽しましょう!
そして、その時には、みんなの演奏中の「いい顔」もしっかり写して、ブログにアップしますね!

初めて出会った訳のわからないオジサンの、訳のわからないレッスンに、夢中で付いて来てくれて、ありがとう。
でも、僕は、君たちとの「嵐のような時間」が、とても楽しく、とても勉強になりましたよ。

東関東大会では、顧問の先生とさらに勉強を深め、さらに進化した演奏を聴かせてくださいね。
客席から応援しています!

お招きいただき、ありがとうございました。


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| | 2015-09-02(Wed)20:23 [編集]