田川伸一郎のブログ

「冬げしき」

今日は、東京都の小学校に、音楽授業サポーターとしてお招きいただきました。

他校の先生方も見学にいらしていました。
今日は、私が授業を進める形で、5年生の教材『冬げしき』(文部省唱歌)の導入を扱いました。

この曲は、歌い込むと、旋律の魅力、歌詞の表す世界に子どもたちも引き込まれ、とてもよく歌っていた曲ですが、子どもと曲との出会いを工夫しないと、「何やら訳のわからない曲」のように受け取られ、教える側も、「さらっと歌って終わり」となり易い曲でもあります。

そこで、「こんな導入はいかが?」という流れを実演させていただきました。

IMG_8590_convert_20151126223905.jpg


『冬げしき』

さぎり消ゆる 港江の  船に白し 朝のしも
ただ水鳥の声はして 今だ覚めず 岸の家 

からす鳴きて 木に高く  人は畑(はた)に麦をふむ
げに小春日の のどけしや  返りざきの 花も見ゆ

あらし吹きて 雲は落ち  時雨ふりて 日はくれぬ
もしともしびの もれこずば  それと分かじ 野辺の里  



「今日は、『冬げしき』という曲と出会うんだけど、冬の景色って言えば?」
・・・雪、クリスマス、氷、スキー場、 ・・・んんんと...

「前に『まっかな秋』を歌ったけれど、冬は何色?」
・・・白、灰色、透明...

「なるほどね、透明っていうのいいね! そんな冬のけしきを描いた曲ってどんな曲かな? まず、歌ではなくピアノで聴いてみよう」
・・・田川の下手ピアノで、『冬げしき』の演奏(旋律付きの本格伴奏)

「みんながイメージしていた『冬を表した曲』と一致したかな?」
・・・んんん、ちょっと違う。

「どんな風に違う?」
・・・もっと静かな曲、もっと暗い曲、もっと冷たい感じの曲...(この発問は難しいな)

「じゃあ、ちょっと質問変えるけど、みんながイメージした曲と比べて、今弾いたの曲の方が冷たい感じがしたかな?それともあったかい感じ?」
・・・(全員が)あったかい感じ

「そうか、少しあったかい感じの曲に、どんな歌詞が付くと冬らしい曲になるのか楽しみだね。今日は、教科書も見ないし、歌詞も出しません。今からCDを聴いて、歌詞を解明して行こう。さあまず1番はどんな歌詞かな?」

ラジカセを使い、範唱CDを1番だけかけます。

IMG_8594_convert_20151126224011.jpg

子どもたちは、身を乗り出して歌詞を聴き取ろうとします。
聞き慣れない言葉もありますが、聴こえてきた言葉を小さい声でつぶやいている子もいます。

「さあ、聴き取った言葉を発表してごらん。」
・・・ふね、家、とり、白し...

子どもたちから出た言葉をホワイトボードに完成した歌詞の位置を予測して書き込んで行きます。

IMG_8589_convert_20151126223850.jpg

んんん...わからない。

「もう一度聴きたい人?」 ・・・は~い!

「じゃあ、かけてあげるね」 子どもたちの身の乗り出し方は、ますます真剣に。
こうして3回聴き取ることで、1番の歌詞が完成しました。

ここで、1番の歌詞の解説です。
「時間は? 場所は? 気温は? 聞こえるものは? 人は?」と、発問もしながら、1番の歌詞の情景を理解していきます。

「じゃあ、この歌詞を見ながら1番を歌ってみようか?」 おもむろにピアノを弾き始め、そのまま旋律奏で助けながら歌わせます。
子どもたちは、全く間違えずに歌えてしまいました。

「みんなすごいね。先生は、『歌詞を聴き取りなさい』と言っただけなのに、みんなはメロディーも一緒に聴き取っていたんだね。すばらしい耳だね! はい、もう一回歌おう!」

子どもたちは、いきなり褒められ、ますます良い声で歌い出します。
「すばらしい! じゃあ、今度はピアノ弾かないけど歌えるかな? 挑戦!」

3回目にして、アカペラで正しく歌えてしまいました。

この方法でこの曲を進める時、いつも子どもの力のすごさを感じます。
子どもは、歌詞と一緒に旋律もインプットしているのです。

同様の方法で2番も聴き取りました。

IMG_8592_convert_20151126223938.jpg

子どもたちは、慣れて来たので完成も早かったです。

そして、歌詞の押さえを1番同様に。

「麦ふみ」の解説は写真資料で、そして、「せっかく生えた芽を、愛情込めて優しく踏むんだよ。愛情込めて、それが大事なポイント。みんなやってごらん。」 みんなで「麦ふみ」の真似。「音がするはずないよね。愛情込めて踏むんだよ。」
「ライオンの親は自分の子どもを崖から落として育てるっていう話、聞いたことあるかな?麦ふみと心は似てない?」と余談も挟みます。

そして、1番の歌詞との対比をします。
時間、温度、場所、人の存在、見えるもの、聞こえるもの...歌詞を比較して話し合います。

歌詞唱は、さらにしっかり出来ました。

「この流れでいくと、3番はどんな歌詞になりそう?」

・・・夜、天気が悪い、もっと寒い...

「3番は、聞き取りではなく、教科書を見てみよう。さあ、どうかな?」

・・・夜だ、日はくれぬって書いてある、嵐

雲は落ち、ともしび、もれる、などの言葉を押さえ、目をつぶらせて、夜の野辺の里を想像させる。

3番も歌詞唱がしっかり出来ます。

IMG_8593_convert_20151126223954.jpg



「では、『冬げしき』の1番、2番、3番、それぞれの情景を思い浮かべながら、通して歌いましょう。」

ピアノ伴奏で、通して歌う。

「通して歌ってみて、自分で一番心の中でしっくり来たのは何番かな?」と挙手を促す。

1番が多数、2番、3番が少数ずつ。

「それぞれの人の中に『冬げしき』が描かれたね。今日は、歌詞を聴き取って解明しました。旋律は、先生が指示しなかったのにみんなはしっかり聴き取って歌えました。1番から3番までの情景の違いはわかりましたか?今日は、正しく曲をつかめたので、次回は、さらに表現が豊かになるようにどうしたらいいか、先生と一緒に勉強してください。」

ここまでで、ちょうど45分で完了しました。
先週に学芸会が終わって、ほっとしている上に、この授業は6時間目、おまけに担任の先生は出張で不在という状況だったため、少々集中力を欠いてしまう場面や他に気持ちが向いてしまう子どももいましたが、最後までしっかり知らないオジサンの授業についてきて、立派でした。


普通は、この曲の導入時には、教科書を見せて、歌詞を読ませたり、範唱を聴かせたりして、曲と出会い、「歌詞の理解」「歌の練習」と進むのですが...

・あえて、ピアノだけで曲の感じをつかませ、歌詞への関心を高める。
・しかし、歌詞は提示せず、範唱を聴いて聞き取らせる。クイズのように歌詞をとらえていく。
・聴き取った歌詞についての説明を加えるので、「なるほど」と納得しやすい。
・子どもたちは、同時に旋律を聴き取っており、すぐに歌えて、ほめられ、ますます自信をつけて歌い、確実な歌詞唱ができるようになっていく。
・2番が終わった段階で、一番との比較をすることで、3番への予想を立ててから歌詞に出会う。
・歌詞の意味だけでなく、時間や温度、天気、場所の違いなどをとらえさせることで、曲の「命」に近づける。


などの配慮をした展開もいいのではと思います。

5年生の担任の先生方、音楽専科の先生方、『冬げしき』をされる時には、お試しになってみてください。


これは、「模範授業」ではありません。
先生方は、もっと良い「導入の授業」をされていることと思います。
あしからず...

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2015-11-27(Fri)20:17 [編集]