田川伸一郎のブログ

年末のすばらしいひととき

この年末、県内の2つの高校バンドの演奏会に出かけて来ました。

柏市立柏高等学校、そして、船橋市立船橋高等学校です。
どちらも、千葉県が誇るトップバンドです。


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24日の午後は、柏市民文化会館で開催された柏市立柏高等学校吹奏楽部の『チャリティーコンサート』へ。

『チャリティーコンサート』と言っても、実質は定期演奏会です。
このコンサートは、5日間開催され、1日に2公演ずつ、合計10回の公演だそうです。
全く同じ内容の公演を10回もやるのに、チケットはなかなか取れないプレミア物。
私は、レッスン校の小学校の卒業生からのご案内でゲットすることが出来ました。
小学校時代に私のレッスンを受けた子が、市立柏高校の吹奏楽部で充実した日々を送っており、それを見てほしいと連絡をくれること自体がうれしくてたまりません。

今年度の部員は263名。 驚異的な人数です。
この大勢の部員たちを、まるで「精密機械の部品」のように綿密な計画とアイデアとご指導で動かしていらっしゃるのが、石田修一先生はじめ7名の顧問の先生方です。
演奏会は、約2時間、休憩無しのランスルーです。
全てが「秒刻み」と思われるほどの流れで、次々に演奏、そして、市立柏ならではのパフォーマンスで、聴衆の眼と耳を釘づけにしていきます。

入口では、「インフルエンザや胃腸炎が流行しております。予防のためにも、どうぞマスクをお使いください」と呼びかけ、マスクを無料配布のサービスまで...こんな演奏会は経験したことがありません。
私は元々マスク派なので持参していますが、このサービスを受けて、満席の会場の人々はマスクだらけ...これはこれでけっこう異様な光景でした(笑)
でも、演奏演技に手一杯なはずなのに、お客様の健康にまで気づかいをされる...これも石田先生のお心づかいの表れでしょう。

演奏会は、「お客様を楽しませる」という方針に徹しています。
コンクールで全国大会金賞を受賞した課題曲と自由曲以外の曲は、子どもからお年寄りまでが楽しめる曲ばかり選曲しています。
実際、お年寄りのファンも多いのが「イチカシ」の特徴です。
司会は、管楽合奏コンテストでも、雰囲気を温かくしてくださる津田沼高校の太田井稔先生。(以前は市立柏高校で顧問をされていました。)
このコンサートにはなくてはならない存在です。
曲の紹介、場つなぎも絶妙。 石田先生の「秒単位」のスケジュールを完璧に理解しての業です。

最後にお伝えするのも変ですが、何と言っても、演奏が上手い! 音が美しい! 
こんなに大勢で演奏しているのに、どうしてこんなにクリアで澄んだ音がするのでしょうか。
耳に痛い「爆音」などひとつも聴こえません。
私の席のすぐ後ろに、お母さんに抱っこされた赤ちゃんがいましたが、2時間、一度も騒ぐことも泣くことも無く、時々振り返って見ると、いつもステージに見入っていました。
「子ども」どころか、「赤ちゃん」をも惹きつける演奏なのです。

終演後、「ふぅ」とため息が出るほどの目くるめく2時間でした。

1月の始めには、長崎に演奏旅行をされるそうです。
きっと長崎の方々も、驚きと感動でいっぱいになられることでしょう。
263名、そして全員分の楽器や演出機材が長崎まで行く...考えただけでも、気が遠くなる感じです。
「イチカシ」だからこそ出来ることだと思います。
頑張って来てほしいです。



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そして、昨夜は、習志野文化ホールで開催された船橋市立船橋高等学校の『第33回定期演奏会』へ。

今年度の部員は、101名。 トップバンドとしては、驚くほどの多い人数ではありません。
顧問の高橋健一先生は、1年生の入部の時に、ゆっくりしっかり話をし、「3年間辞めずに続けること」と、本人の努力、勉強との両立はもちろん、保護者、家族の皆さんの協力が得られることを十分に確認してから入部を決定させるそうです。
中学校を回って「青田刈り」をし、即戦力として使うトップバンドもある中、先生はこうして「高校生活にとって部活が何なのか」ということをゆっくり考えさせてから入部させ、「あこがれ」だけや「戦力」として入部させることをしません。
その結果、こういう落ち着いた人数になります。

この位の人数でないと困ることが高橋先生にはあります。

高橋先生は、部員ひとりひとりに「部活日誌」を書かせています。
週1回提出することになっていて、生徒の書いて来た日誌に、先生は一言ではなく、びっしりお返事を書いて返していらっしゃいます。
毎週100人以上の日誌に返事を書くだけでも大変なのに、これが200人を越えたら...こういうことは出来なくなるでしょう。
吹奏楽は、集団で作る音楽ですが、そこにいるひとりひとりの「人間としての尊厳」を守り、「人間教育」として成立させるためには、「号令ひとつ」で動かすだけの指導では限界があります。
常に、ひとりひとりの生徒と心で会話している必要があります。
今年の3年生は39名、入部時からひとりも辞めずにこの日を迎えたそうです。
高橋先生のひとりひとりを大切に育てる思いがあってこそでしょう。

もうひとつこの位の人数が良いとお考えなのは、「3年生は絶対にコンクールに出す」という方針からです。
「3年間、自分について来てくれた3年生をひとりでも落とすわけにはいかない」というお考えです。
特に「青田刈り」の高校では、1年生が即戦力でコンクールメンバーになり、今年は頑張ろうと思っていた3年生がメンバーからはずされることなど普通に行われています。ただ「勝ちたいから」です。
高橋先生は、3年生より上手な1年生が入って来ても、3年生をはずして1年生をコンクールメンバーにすることはされません。
3年生だけで55名を越えると、3年生でも当然コンクールメンバーに入れない生徒が出て来ます。
だから、この位の人数が良いそうなのです。

定期演奏会の話からそれてしまいましたが、昨日の定期演奏会は、高橋先生がそうやって大切に育ててこられた生徒さんたちへの「愛」に溢れていました。
集団としての力もさることながら、ひとりひとりが「自分は先生に、仲間に、愛されている」という自信や誇りを持ってステージに立っていることが伝わって来ました。ひとりひとりが、本当にキラキラ輝いていました。
また、「お客様を感動させよう」という「計算」ではなく、「お客様にメッセージを届けたい。そして、そのメッセージに感動していただけたらうれしい」という「願い」が込められていることに高校生としての自然で素敵な姿が見えました。

このバンドの定期演奏会の毎年のメインは「吹劇」です。
言葉はない、演奏・演技だけで「メッセージ」を伝える演目です。
毎年、先生がテーマを決め、そのイメージに合った曲を樽屋雅徳さんが書き下ろし、三森渚さんが振り付けを考え、先生と生徒さんたちがたくさんの意見交換をしながら作り上げていきます。
今回は、市船OBの池田有輝さんも作曲に加わっていました。
吹劇第11弾となる今年のテーマは、「ひこうき雲~生きる」...高橋先生が、終末期医療に関わっていらっしゃる看護師さんから聞いた「余命を宣告された方は死を待つのではなく、ご自分の残された時間を"どう生ききる"かなんですよね」という話に心が動き、このテーマを決められたそうです。
言葉ではお伝え出来ない、そこにいた人たちだけが得られる感動でした。
ひとりひとりの部員たちが、「今、伝えたいこと」を心底理解し、感じ、感動しながらの演奏演技。
伝えたいひたすらな思い...それがメッセージとなって客席に伝わる...私は涙が溢れました。
日本中の方々に、この吹劇を見せてあげたい、見てもらいたい...そう思いました。

折しも、高橋先生のお母様は、福島の老人ホームで、今ご体調を崩されておられ、先日も先生は練習を抜けて福島まで行って来られたとのこと。
まさに、お母様が「生ききろう」とされているお姿に寄り添いながらの昨日の本番でした。
先生の実感としての「テーマ」を、101人の高校生たちが表現し切ってくれました。

私自身、フリーになってから、今年は一番辛い年でした。
今も、顔は笑顔でも、様々な苦悩を抱えたまま過ごしています。
でも、市船の吹劇から勇気をいただきました。
きっと客席にいらした多くの方々が同じように、それぞれの抱えていらっしゃる現実に向き合う勇気をもらえたことだと思います。

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偉大なる教育者、高橋健一先生です。


市立柏高校吹奏楽部、市立船橋高校吹奏楽部...それぞれに顧問の先生の考え方も、部活運営の仕方も、演奏会の作り方も全く違います。
どちらが良い悪いではありません。
これだけの熱い情熱を傾けて、吹奏楽という世界の中で、「今ここに精一杯生きていること」がすばらしいのです。
先生方と生徒さんたちの幸せを想います。

両校の先生方、生徒の皆さんからいただいた感動とパワーを、私の命の中に染み込ませていきたいと思います。

両校吹奏楽部の益々のご発展を心からお祈りいたします。

年末のすばらしいひとときをありがとうございました。


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| | 2016-12-29(Thu)21:16 [編集]