田川伸一郎のブログ

小学校授業での発声指導について

「授業で簡単にできる発声指導はありませんか?」と、よくご質問をいただきます。

発声指導にかかわらず、授業やバンド指導についてのご質問は、ともかく、「簡単に」「短時間に」「誰にでも」という言葉が付いていただくことが多いものです。

先生方が手を抜いて、楽しようとしているわけではありません。
「目の前にいる子どもたちの実情」、そして「与えられた時間」という条件の中で、「何とか子どもたちに力をつけてやりたい。」という願いが、そのような言葉になって表れているだけなのです。
決して、「手料理でなくレトルトで済ませちゃおう」などという気持ちではありません。(最近のレトルトはとても美味しいですが...)

それほど大変なのです。教育現場は...
「ちょっと難しいことをやろうとすると、すぐ『えー。めんどくさい。』とそっぽを向いてしまう子どもたちを相手に。」
「以前より、高学年は20時間、中学年は10時間も音楽の年間授業時数を減らされたけれど、『身につけさせたい力』は減るわけでもなし。」
「音楽専科がいない学校では、担任の先生が冷や汗かいて『音楽』を教えなければならず。カラオケは大好きでも、『音楽』の授業となるとねぇ。たとえ音楽専科であっても、大学で勉強した音楽と教室での音楽は別?」


特に音楽専科の場合は、「音楽の授業」で勝負しなければなりません。時間割の組み方によっては、高学年は週に1回しか授業できない週もあり、たった45分の中で何が何でも子どもたちの気持ちを引き付け、力を付けてあげなければならないのです。


ここで忘れてならないのは、「簡単に」「短時間に」「誰にでも」 は、教師側の言葉であると共に、実は子ども側の言葉でもある ということです。

つまり、
教師が、「簡単に」「短時間に」「誰にでも」 教えられることは、
子どもも、「簡単に」「短時間に」「誰にでも」 身につけられること

だということです。
教師も子どもたちも、「簡単に」 「短時間に」 「誰にでも」 力をつけられれば、音楽の授業はどんどん楽しくなっていくはずです。


表題に戻って、発声指導についての私の実践事例 をご紹介したいと思います。

授業時数が年間70時間あった時代には、「発声練習」を加えた様々な授業導入パターンを工夫していました。しかし、今の授業時間数になってからは、削いで削いで残ったたった1つの「発声練習」だけでスタートし、すぐに授業内容に入っていました。

それは、「ほたるこい」 を使った発声練習 です。

次のようにやります。

ひとりの子ども(はじめは教師でもよい。男性教師の場合はファルセットが良い。)が、「ほー、ほー」と歌い、それを聴いてクラス全員が、「ほたるこーい」と歌いつなげます。(この音程は、いわゆる 「ほたるこい」 の歌のとおりの二度音程のメロディーです。)
その「ひとりの子ども」は、「ほー、ほー」の高さを変えて3回歌い、クラス全員の子どもは、毎回変わる「ほー、ほー」の高さを追って「ほたるこーい」と歌いつなげます。


たったこれだけです。

その「ひとりの子ども」は、はじめは良い発声をしている子どもを選ぶとよいです。この「良い発声」とは、頭声的発声です。今は、その曲に合った発声で歌うのが良いとされていますが、身につけさせたい基本はやはり頭声的発声だと思います。

この発声練習を毎回の授業のはじめに2人分やります。つまり、6回の「ほー、ほー、」「ほたるこーい」が歌われます。早ければその時間に、遅くとも数時間後には、クラス全体の声が変わっているはずです。
以前、島根県の小学校で「飛び込み公開授業」に招かれた時、この発声練習をさせていただきましたが、見事に1時間で子どもたちの歌声が変わってしまいました。

この発声練習には、たくさんの「有効成分」が含まれています。

音楽的には...
・「ほ」が「HO」であるため、声が喉のどこかで引っかかることなく、空気と一緒に素直に出やすい。したがって、頭声的発声で歌いやすい。出だしがきれいに出ると、後の声も全部きれいに出る。
・「ひとりの子ども」の音の高さにつなげなければならないので、その子の「音」を聴き、自分の中で「その高さから歌う」という「目標と反応」が持てる。
・どんな高さから始まっても、「ほたるこーい」は、その音から長二度下がってまた戻るという「音の移動」をするので、即座に「移調して」歌っていることになる。いつのまにか移調能力もついてくる。

心の面からは...
・ひとりで歌うのは「ほー、ほー」だけなので、よほどのことがない限り「ひとりで歌う抵抗」がかなり少ない。
・「ひとりの子ども」は、とんな高さから始めてもいいので(ただし、地声の低~い声は使わせないが)、その子に合った高さで歌える。
・「ひとりの子ども」の「ほー、ほー」の後を追って歌いつなげるということは、その「ひとりの子ども」を皆で認めていることに他ならない。どんな目立たない子どもでも、「クラス全員を従えた感じ」を味わえる。つまり、ひとりひとりの存在感・所属感を高めることができる。
・得意な子ばかりでなく、全員ができることなので、皆が平等に「主役」になれる。だから、授業の雰囲気が明るくなる。

などなど...

曲の中で、つい地声で歌ってしまっている時は、「ほたるの声で歌おうね!」と言うだけで、すぐに美しい声に戻るようになります。
しかし、 「HO」のため、声がこもりやすいという「副作用」もありますので、ご注意ください。


時間が無い中、この方法1つだけで「発声練習」を済ませてきました。でも、十分な効果がありました。
合唱部でたくさん発声練習をされる場合は、もちろんもっと緻密なパターンでの訓練が必要です。
あくまでも、授業の中のほんのわずかな時間でできる発声練習のアイデアです。

4年生から3年間やると、6年生になった時の歌声は「保証付き」です。3年生からやると、もっといいです。
1年生や2年生でやってもいいですが、まだ元気いっぱい歌っていてもいいかな。少々地声であっても。でも、優しい声で歌わせたい曲の時には、少しやってみては...。

「簡単に」「短時間で」「誰にでも」いい声を引き出すことができますよ!


是非お試しください。









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