田川伸一郎のブログ

信頼の絆

一昨日の日曜日は、ある中学校のレッスンでした。
早くからご予約をいただいていたこの日。

4月半ば、顧問の先生からのメールで、先生が急に体調を崩され、入院までされていることが知らされました。
病院のベッドからのメールでした。

「連休後には何とか復帰したいのですが...。先生のレッスンの日には無理かと思うのです。でも、生徒たちも楽しみにしていましたし、予定どおりレッスンにお越しいただくことは出来ないでしょうか。何も指導出来ていません。3学期に課題曲は練習していました。・・・」

新年度に入って間もなくお休みされてしまわれた先生。
練習だけでなく、新入部員の募集もある時期で、きっと先生も生徒も不安でいっぱいに違いありません。
先生には、もちろん授業や学級、校務のことも重くのしかかっていると思います。

これでレッスンまでキャンセルしてしまったら...。


私の主義で、顧問の先生がいらっしゃらない時には、生徒さんたちへの指導は極力避けることにしています。
急に会議や生徒指導が入る場合もありますが、そのような時は、先生がいらっしゃるまでは、生徒さんの練習を見守ることにしています。
その時間が長くなりそうな場合は、せいぜい基礎合奏をみる程度にし、曲には触れないようにしています。
先日は、会議がかなり長引きそうだということが当日の午前中にわかり、その日のレッスンを急遽キャンセルさせていただいた学校もありました。

考え過ぎかもしれませんが、顧問の先生がいらっしゃらないのに、外部の人間が生徒に指導を加えるのはいかがなものかと思うのです。
本番の指揮まで任されている「常勤外部講師」の方や、今増えている「教師の負担を減らすための外部指導員制度に基づく登録指導者による指導」は別ですが。
あくまでも、先生と部員、そして私の三者がそろってこそレッスンは成り立つものというのが私の姿勢です。

全く正反対に、外部講師任せで、レッスン中はいつも不在という「謎の顧問」もいると、知り合いのバンド指導者から伺ったことがあります。
常時、顧問の先生が指導しており、本番も先生が指揮をするというバンドの時々のレッスンの際に、顧問の先生は立ち合わないというのは、やはり謎です。
「指揮をする顧問の先生に、何も伝わらないので困ります」と、その指導者の方はお話しされていました。
レッスンに立ち会っていただくようにお願いしても、「あとで生徒から聞くからいい。好きにやっておいて」と言われてしまうそうですが、音楽とはそういうものではないでしょう。
もしかしたら、生徒の前で、指揮や解釈のことなどに触れられるのが嫌なのかもしれません。それなら、外部講師は入れずに、ご自分ひとりで指導されれば良いと思うのですが...
そこまでも考えていないのかな?単なるお任せ?
私だったら、絶対無理です。


話を戻して...そんな考え方をしている私ですが、今回は特別な状況と判断してレッスンに伺うことにしました。
先生がいらっしゃらないのを承知の上で。
生徒さんたちは、きっと不安な日々を過ごしているだろう。せめて私が伺って数時間一緒に練習出来るだけでも、少しは気が晴れるだろうと思ったのです。

レッスン2日前、「先日退院して、今は自宅療養中です。レッスンの日には学校に行けそうです」とのメール。

「いや、先生、お休みなさってください。私は、先生がいらっしゃらなくても、きちんとレッスンして帰ろうと思っていますし。・・・」と返信しましたが、「私も先生にお会いしたいですし、勉強したいので」
「ともかく、当日のご体調次第で。少しでも調子悪かったらお休みなさってくださいね」と返信して当日を迎えました。

日曜日、先生は学校にいらしていました。
正式な復職前の「フライング出勤」です。ご本人は、「リハビリ」とおっしゃっていましたが...
思っていた以上に元気にされ、否、元気に見せていただけかもしれませんが、いつもの笑顔でお迎えくださいました。

レッスン前に、下の部屋でしばらくお話ししている間中、練習の音やチューニングの音、基礎合奏の音が聴こえ続けていました。
「みんな、ちゃんとやっていますね。こうやって3週間、過ごして来たんですね。」
「ちゃんとかどうかわかりませんが、とりあえず、やってくれていたようです。」

音楽室に入ると、生徒さんたちも、心配していたほどではなく、いつもの元気と笑顔で「こんにちは!!」
少しだけおしゃべりしてから、すぐにレッスンに入りました。
顧問の先生はお休みされていることになっているわけですから、もちろん見学に徹していただきました。
最初から私が指揮台に上がり、3学期に練習を始めていたという課題曲のレッスンに入りました。

中学校バンドで、顧問の先生が3週間おられず...
副顧問の先生はいらしても、音楽を指導してくださる先生はおられず...
しかも、新年度のバタバタした日々の中で...

でも、皆の音と顔は、生き生き溌剌と輝いていました。
もちろん演奏には傷がいっぱいでしたが、ひとりひとりが「自分の音」に責任を持って演奏しようとしている姿は確実に見て取れました。

私は、心に何かズシンと響くものを感じ、3時間ノンストップでレッスンを続けました。

「心に何かズシンと響くもの」・・・それは、先生と生徒の「信頼の絆」だと、途中で気づきました。

先生だって人間です。 時には、病気をすることや家族の不調に見舞われて、お休みせざるを得ないことだって当然あります。

そんな時、学校にいなくても、生徒を思い続けている先生の気持ち。
お休みされている先生を心配させまいと、先生を思い続けている生徒の気持ち。
・・・特に、部活動での先生と生徒の「信頼の絆」は、こういう危機に面した時に力を発揮します。

厳しいようですが、日頃、先生が指導されていることが、こういう危機に面した時にわかってしまいます。
先生がお休みされたことで、気持ちが緩み、崩れていってしまう集団。
先生がお休みされたことで、結束が固まり、何とか乗り越えようとする集団。
「信頼の絆」の度合いがわかってしまうのです。

「みんな偉かったね。先生が3週間もお休みされていたのに、こんなにしっかりと練習を続けて...。いつも先生にしていただいている指導を思い出して、自分たちで進めて...。しかも、1年生の部員勧誘や対応までやって、しっかり新入部員を獲得して。」
・・・心を込めて、生徒さんたちにお話ししました。
みんな、ニコニコして話を聞いていました。 もちろん、先生も。

先生は、もうじき正式復帰されます。
崩れてしまった集団を建て直す苦労をする必要もなく、この元気で明るく、そして、真面目な生徒さんたちと共に、またここから前進することが出来ます。

それは、全て「信頼の絆」のおかげです。

次のレッスンの時には、元気に指揮をしてくださる先生のお姿を楽しみにしています。
でも、先生、くれぐれも決してご無理をされないで...
この子たちは、先生がいらっしゃらなくても、自分たちでこんなに出来る子たちだということがわかったのですから。

すばらしい先生、すばらしい生徒たち...これからも、ほんの少しでも役に立たなきゃ、私も。


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| | 2017-05-02(Tue)22:28 [編集]