田川伸一郎のブログ

市船吹奏楽部見学記~5月11日~

昨日は、県内の小学校レッスンを終えた後、船橋市立船橋高等学校吹奏楽部の「夜練習」の見学に伺わせていただきました。

市船吹奏楽部は、今度の日曜日に千葉県文化会館で開催される「バンドフェスタ」に向けて、12月の定期演奏会で発表した「吹劇『ひこうき雲』~生きる~」を、入部したばかりの新1年生を全員含めた現メンバーで作り直しています。

12月の定期演奏会の感想は、下記の記事をお読みください。
http://schoolbandsupporter.blog24.fc2.com/blog-entry-1371.html

この「吹劇」のために、やむを得ず、夜までの練習をしています。
運動部の練習が終わるのを待ち、その後しか体育館での練習が出来ないからです。

1年生は、入部後、この吹劇の練習に入ってまだ3週間目。
定期演奏会で発表した演目とはいえ、3年生が抜けて1年生が入り...ひとりひとりの役割は大きく替わっています。

この時期の1年生入りの発表といったら、せいぜい2.3年生の演奏に合わせて踊る、歌う、演技する、あるいは2.3年生で演奏出来る曲に混ざる...位が普通です。
簡単に言うと、1年生は「おまけ」。

市船では、あえて1~3年全員で同じ試練を乗り越えてひとつの作品を作り上げています。


体育館が空くまでは、廊下で動きだけの練習。そして、音楽室では打楽器のパート練習。

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4月に見学させていただいた時の記事にも書かせていただきましたが、昨日も、2.3年生から1年生への注意の仕方は、上からではなく、「~してもらってもいいですか?」「~に気をつけるようにお願いします」の口調でした。
入部して間もなく、まだ何もわからない、何も出来ない1年生が、先輩方からこんな丁寧な口調で指示や注意を受ける...ここからすでに「市船吹奏楽部の洗礼」を受けているのだと思います。

この部には、ひとりひとりの「人格・尊厳」をどこまでも大切にするのだという「常識」があります。
それは、顧問の高橋先生から生徒への思いが元になっています。


小学校、中学校は、地域の学校ですから、子どもは学校や先生を選ぶことが出来ません。
たまたまそこに居合わせた先生の教えを受けるしかありません。
しかし、高校は違います。 子どもは学校や先生を選べます。 もちろん、「学力」という条件はありますが。

千葉県には、市立習志野、市立柏、市立船橋、幕張総合という「トップ4」の高校バンドがあります。
日曜日の「バンドフェスタ」は、まさにこの「トップ4」の高校が出演するビッグイベントです。(すでにチケットは完売とか)
「吹奏楽に高校時代の全てを懸けたい中学生」の多くが、この「トップ4」のどこかにあこがれ、入学していきます。

逆に言うと、「その学校」と「顧問の先生」は、生徒たちに「選んでもらった」ということです。

高橋先生は、「市船を、自分という教師を選んでくれた生徒たちを、ひとり残らず3年間大切に育て上げなければならない。ひとり残らず悔いのない高校生活を送らせなければならない。『市船に来てよかった、高橋先生を選んで良かった』と思わせなければならない・・・卒業の時、本当にそう思わせなければならない。だから、責任の重さは半端ないです」とおっしゃいます。

「自分を選んでくれた生徒たちをひとり残らず大切に育て上げなければならない」...生徒の「人格・尊厳」を大切にする先生のそんな思いが、この市船吹奏楽部の「常識」につながっているのだと思います。

残念なことに、全国大会に出場するような「トップバンド」の顧問の先生の中には、「うちはたくさん入部するけど、どうせ毎年〇十人は辞めちゃうから」と平気で口にする先生もいます。
自分を選んで、希望を持って入学・入部して来てくれた生徒が、毎年〇十人も辞めてしまうということは、「あなたを選ぶんじゃなかった」と後悔する生徒が毎年〇十人もいるということです。
・・・「教師」として口に出来ることではない屈辱と反省であるべきです。

「出会った先生で子どもの人生は変わる」...私はずっとそう思って来ました。
たまたま出会う小・中学校の先生とは違い、「選んで出会ったトップバンド高校の先生」が、「あなたと出会うんじゃなかった」と毎年〇十人もの生徒に後悔されるとしたら、仮にコンクールで良い賞を取ったとしても、「教師」としての価値や資質はどうなのかと...。

市船吹奏楽部には、退部者がほとんどいません。
ごくまれに、本当にやむを得ない「家庭の事情」「ドクターストップ」などで辞めざるを得ない部員はいるようですが、部活そのものの問題や人間関係の問題、顧問との信頼関係の欠落で辞めていく部員はいません。

「顧問」である以前に「教師」としての責任を重くとらえていらっしゃる高橋先生の強い信念があるからです。
「退部者を出したら、自分の負け」とまでおっしゃいます。
生徒に対する教育者としての責任、自分を選んでくれた生徒への責任...それが高橋先生の部活運営の根幹にあります。

先輩・後輩の関係、部員たちの関係も、先生の思いに近いものがあります。
雑用は先輩がやる。
退部者を出したら先輩の負け、仲間の負け。
ひとり残らず、大切にする。
ひとり残らず、後悔のない「人生の中の大切な3年間」を送れるようにする。
だから、互いに本音で向き合う。 ただし、相手の「尊厳」を守りながら。
・・・


「吹劇」の練習は、12月に一度本番を経ている2.3年生も1年生と一緒に大汗かいて練習を続けます。
「一緒に」・・・です。
1年生だけにやらせ、ただ上から注意をしてしごくのではなく、自分自身も共に自分の課題を乗り越えながら必死に...です。
2.3年生も、12月とは役割が替わっているので、自分のことにも必死にならざるを得ないのです。

やっと体育館に移動して練習が始まったのは、8時を過ぎてからでした。

12月に私が涙した「ひこうき雲~生きる~」です。
高橋先生の大切な教え子・浅野大義君が、20年という短い人生の最期に見た作品です。

まだ3週間しか練習していない1年生も全員が役割を演じます。
「おまけ」の役などひとつもありません。
ただ歌う、ただ踊るではありません。
「役割を演じ切る」のです。

それぞれの環境で小学校・中学校生活を送って来た1年生たち。
これまでの経験も様々です。
まだ市船に入学して、通学や新しい友達、高校の勉強自体に慣れるのに必死な時期です。
そんな1年生たちも、大切な大切な「レギュラーメンバー」です。

1年生がうまく出来なかったら先輩の負け...そんな責任を感じながら丁寧に教えて来た先輩たちの思い。
そして、市船を、高橋先生を選んで入学して来た1年生たちのただただ「頑張る」の思い。
それらがひとつになって、「ひこうき雲~生きる」を作り上げます。

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通し練習前、高橋先生からの「思い」を真剣に受け止める部員たちです。

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練習を見ながら、私は涙が止まりませんでした。

樽屋雅徳さん書き下ろしの音楽のすばらしさ、心のこもった演奏、合唱、演技に...
この「生き切る」というテーマの作品を眼に焼き付け、20年という短い人生を「生き切った」と旅立った浅野大義君の思いに...
偶然か必然かわかりませんが、高橋先生から浅野大義君への最大の愛が込められた「人生の贈り物」になったこの作品そのものに...
わずか3週間という期間で、この作品の中に確かにいる1年生たちに...そして、そう育てた先輩たちの努力に...
「『みんな』ってすごい」というシンプルで深い感動に...

しばらく、言葉が出ませんでした。

こうして体育館で通し練習が出来たのは、まだ2回目だということです。
信じられませんでした。


この吹劇には、「主人公」はいますが「主役」はいません。
否、1年生を含めた部員全員が「主役」なのです。

「みんな」ってすごい。
本当にすごい。

市船吹奏楽部の練習を見学させていただく度に、忘れかけていた大切なことを教えられます。

日曜日、「バンドフェスタ」で、この「ひこうき雲~生きる」を観られる方々の幸せを想います。


昨日も、朝から走り回り、帰宅は深夜になりましたが、とてもとても良い1日でした。

感謝です。

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| | 2017-05-12(Fri)20:27 [編集]


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| | 2017-05-13(Sat)00:03 [編集]


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| | 2017-05-13(Sat)11:53 [編集]