田川伸一郎のブログ

その言葉だけでも...

今日は、県内の小学校にお伺いしてきました。
この学校には、今年度、2回目のお伺いとなります。


幸いなことに、お伺いする多くの学校で、すばらしい顧問の先生、そして校長先生と出会う機会をいただき、私自身の「人間」としての学びをさせていただいています。
そして、今日お伺いした小学校の校長先生も、そんなすばらしい校長先生のおひとりです。

雨の中、学校にたどり着くと、校門のそばに「6月の行事予定」が掲示されていました。

何気なく見ると...

6月2日(木) ブラスバンド部講習会 

とあるではありませんか。

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私のレッスンをこのように「月行事」に書き出してくださってあるのです。
そこまでしていただかなくても...


今日は、貴重な「5時間授業」の日です。
この学校では、前回も今日も、その5時間目が終わった10分後には、音楽室に部員が全員そろって音を出していました。
こんな学校はめったにありません。

レッスンであっても、「帰りの会」が長引いて、来ていないクラスがあったり、「残り勉強」の子が遅れてきたり。
「講師の先生がいらっしゃるから。」と、顧問の先生が担任の先生に伝えておいても、そうは簡単にいかないのが、「普通の学校」だと思い、私も気にしないようにしています。

校長先生に伺うと...
「今日は、田川先生をお迎えする大切な日ですから、行事予定に書いておくのは当然のことです。そして、めったに教えていただけない先生がいらっしゃるのですから、少しでも早く始められるように協力して、子どもたちにたくさん勉強の時間を与えてあげましょうと、私から先生方に話しているのです。各担任の先生方がそれぞれに考えて、子どもたちを早く音楽室に送り出すように工夫してくださっているようです。」と...

学級によっては、「帰りの会」の大事な話を5時間目の前にしておいて、「さようなら」の前に部員を送り出してくださっている学級もあるとか。

「先生方は、顧問や子どもたちががんばっているのを知っていますから、誰も文句など言いませんよ。みんな、喜んで協力してくれています。子どもは学級の中だけで育つのではないということを、皆、ちゃんとわかっているのですよ。」

校長先生は、学級での「勉強」はもちろん、「行事」や「勉強以外での子どもたちの活躍」をとても喜んでおられます。
そして、驚いたことに、バンドの子どもの名前や他の面での活動ぶりまでよく知っておられ、「~さんは音楽だけでなくて、運動もよくできるんですよ。足も速いですし。~君は林間学校の時に、転んでけがをしても、泣き言ひとつ言わずに最後まで歩き切ったんですよ。根性があるし、バンドの練習も全く休まないんです。それから、~さんは、・・・」と、目を細めて話してくださいます。
本当に子どもが好きな校長先生なのだと思います。

レッスンの後には、「田川先生、前回のご指導から今日までの間に、こういう点が成長していたというところはありましたか?」とご質問されます。

前回指導した「基礎合奏」のやり方がよく身について、豊かで広がりのあるサウンドになってきていることをお話しすると、「~先生、よかったですねぇ。田川先生にほめていただけて! 実は、運動会もありましたし、なかなか落ち着いて練習することもできなかったので、私も心配していたんですよ。」と...

「田川先生、正直な話、本校の楽器で、これはちょっとまずいのではという楽器はありますか? まあ、何もかもというわけにはいかないでしょうが、この楽器だけは買い替えないとというような楽器は?」

思わず、顧問の先生と顔を見合わせてしまいました。
校長先生の口から、こんなありがたいお言葉を聞けるなんて...

「あの...まあ、とてもいい楽器がそろっていますし、手入れもいいですが...。その...○○○は、ちょっとかわいそうな。もともと音程を取りにくい楽器なんですが、古いですし、お子さんがちょっとかわいそうで...」
「それは、いくら位しますか?」
「ええと...少しお待ちください。」
私は、お付き合いのある楽器屋さんに電話で確認をしました。

「○○○円位のようです。」
「わかりました。」
校長先生は、立ち上がるとすぐに電話に向かわれました。

「どうなるかわからないですけどね。役所に頼むだけは頼んでみようと思いまして。頼んでも買ってもらえないかもしれませんが、頼まなかったら絶対に買ってもらえることはないわけで。ダメ元で、動くだけ動いてみますよ。」

校長先生は、音楽がご専門の先生ではありません。
しかし、子どもが使う楽器に不都合があるのでは子どもがかわいそうだということをよくわかっていらっしゃいます。
きっと、教育活動のすべての面で、そのようなご心配やご配慮をされていらっしゃるのでしょう。
「子どもだからこそ、できるだけ良い環境を」と...

「校長先生、私たち指導者は、校長先生のそんなお言葉だけでもありがたいのです。楽器のことを相談しても、『予算もないんだし、学校にある楽器でやっていればいいでしょ。』と相談にも乗ってもらえない場合の方が多いのですから。結局は買ってもらえないかもしれませんが、校長先生が楽器のことを心配してくださるお気持ちや、ダメ元でも自分から動いてくださるお姿が、私たちにとっては何よりもありがたいことなのです。」

「いや、私にできるのは、それ位のことだけですからね。」と...。


校長先生の大きな愛情と決断力と行動力、
そんな校長先生の元で、安心して伸び伸びと働く先生方、
子どもであることの「尊厳」をどこまでも大切にしてもらえる子どもたち...

この学校の先生方と子どもたちは本当に幸せです。


「校長先生とお話しさせていただくと、心が豊かになります。今日は、本当にありがとうございました。」

私の方が、深々と頭を下げて、学校を後にしました。


今日も、人としてのあり方を学ばせていただきました。







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