田川伸一郎のブログ

フランスに学ぶ教え子

昨日は、東京オペラシティ・近江楽堂で開かれたバロックバイオリンとチェンバロによるコンサートに行って来ました。

バロックバイオリンを弾いたのは、市川市立大柏小学校吹奏楽部でサックスを担当していた依田幸司君です。
28歳です。


私が特に大切にしている思い出の『エル・カミーノ・レアル』で1stアルトサックスとソプラノサックスを演奏してくれました。(『未来へのファンファーレ』をお持ちの方、DVDをご覧ください!)


彼は、4歳からバイオリンを習っていました。

小学校3年生で出会ってから卒業するまで、彼はいつも「子どもらしい」というビッタリのお茶目で爽やかな子どもでした。
ずば抜けた音楽性と頭脳!を持っていましたが、決してそれを自慢することもなく、いつも誰とでも仲良く戯れていました。

男子からも女子からも保護者や先生方からも、「コウちゃん」と呼ばれ、皆に愛されていました。

そして、音楽を感じて「生き生き」表現する子どもでした。

彼の趣味は、何と「お菓子づくり」でした。
自分で材料やちょっとした道具を買い揃え、暇があるとお菓子を作っていました。

その腕は、趣味の領域を超えて、まさに「プロ級」
クリスマスには、私のために「特製ガトーショコラ」を作ってくれました。
「おぉ...。この味は!」 ほっぺたが落ちそうでした。
だんだんと近所から「注文」まで入るようになっていきました。

部活は皆勤、バイオリンも習い、暇があるとお菓子を焼き、その上、彼は、短時間に集中して勉強し、第一希望の東京都桐朋中学校に一発合格しました。

部活を1日も休むことなく、早退もせず、友達ともたくさん遊び、いつもニコニコして生活していた彼が「受験生」であるということを、受験のために学校を休む直前の連絡で私は知りました。

すごい子どもでした。

そして、彼がやりたいことを伸び伸びとやらせながら、しかも、どこにも迷惑をかけないようにバランスを取っておられたご両親の子育てとご配慮にも敬服しました。

彼は、「僕は、将来は、やっぱりパティシエになりたいな。でも、音楽もやりたいし...」と、いつも素敵な夢の葛藤を語っていました。

その後、桐朋学園大学・同大学院でバイオリンを学んだ彼は、様々な夢を持ってフランスへ留学し、バイオリンの研鑽、そして、もうひとつの人生、「パティシエ」の道の修業にも励みました。


彼の今の「学び」の中心は、バロック音楽だそうです。

フランスで共に学び、演奏活動をされているチェンバロ奏者のピエール・トロセリエさんと共に日本に戻り、今、彼のひとつの研究成果をコンサートという形で報告してくれています。

昨日のコンサートでも、リュリ、クープラン、ダンドリュー、フレスコバルディ、コレルリ、そしてバッハというバロックの音楽を聴かせてくれました。

「プログラム」ではなく、「メニュー」と書いてあったところも彼らしいなと笑みがもれました。
オーバーな感情表現はふさわしくないバロック時代の演奏様式の中で、ぎりぎりのところまで感情を込めた演奏も、彼らしいものでした。
表情豊かな演奏の姿にも、良い意味の若々しさとバロック音楽のみずみずしさを感じることができました。

とても興味深かったのは、「バロック時代の調律」に近い調律でチェンバロをチューニングし、バイオリンの演奏は、そのピッチに合わせて行なうという演奏様式でした。

「平均律」が考案される前の「純正律」を優先した音列による調律です。


コンサートの後、質問した私に、依田君とピエールさんは、ていねいに答えてくれました。
依田君は、私に資料を見せながら説明し、ピエールさんは、チェンバロを実際にチューニングしながら説明してくださいました。

まだ完全には理解しかねる部分はありましたが、純正律で調律したチェンバロのピッチに合わせてバイオリンを弾くと、「旋律としての音程感」には、とても違和感があるということもわかりました。

現代では、平均律が生まれる以前のバロック音楽も平均律で演奏されるしまうことがほとんどなので、「音程感」の面からは全く違和感がないでしょうが、それは本来の姿ではない。
「純正律による古典調律」で演奏するバロックの「微妙な音程感の違い」をバロック時代の人々が感じ入っていた「本来の味わい」として理解し、楽しんでほしいと、依田君は語っていました。


そして、依田君のこれからの課題のひとつが、「五感の融合」だそうです。

聴くなら聴く、見るなら見る、匂うなら匂う、食べるなら食べる...と別々に楽しんでいたものを、ひとつに結び付けて楽しみを深めることはできないか...


金沢と市川では、このテーマのもとに、「ショコラと音楽の融合」を提案したコンサートをするそうです。

すでに金沢公演は終わり、大好評だったとのこと。

今回の日本での公演の予定はこちらです
http://sweetparis.blog84.fc2.com/


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東京オペラシティ・近江楽堂にて 依田幸司君とピエール・トロセイリさん  4/18


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バロック時代の調律を説明してくださったピエールさん。 ありがとうございました。


ちなみに、バロックバイオリンの弦は、「羊の腸」でできているそうです...

なるほど...


音楽とお菓子づくりの両輪に乗って人生を歩む依田幸司君の活躍を祈ります。


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| | 2012-04-19(Thu)21:19 [編集]