田川伸一郎のブログ

岩手県宮古市の小学校バンド

この週末は、岩手県宮古市の小学校バンドにお伺いしました。

昨年度の『東日本学校吹奏楽大会』で金賞を受賞した宮古市立千徳小学校です。


宮古市は、震災で大変な津波被害を受けた地域です。
500名以上の方が亡くなり、4500戸以上の家屋倒壊がありました。

千徳小学校は、沿岸から離れた高台にあったため、児童も家庭も校舎も大きな被害を受けることは免れましたが、市全体の被害が大きく、何とか始業式を行なえたのは、4月下旬だったそうです。
もちろん、バンドの活動もずっとストップして...

やっと活動できるようになった5月、先生と子どもたちは、「こんな時だからがんばろう。」と、自分たちを勇気づけながらしっかりと前に進み、学校始まって以来、そして、宮古市初の『東日本大会出場』を果たしたのです。

顧問の北田智和先生との出会いは、そんな昨年の夏、盛岡で行なわれた『東北小学校管楽器指導者講習会』の折でした。
私が講師としてお招きいただいたこの講習会に参加されていた先生と、グループ協議の際に親しくお話しさせていただいたことが、きっかけでした。

先生は、私のブログを毎日のようにご覧くださり、励みにしていてくださったそうなのです。

そんなご縁で、昨年の9月末に千徳小学校に初めてお伺いさせていただきました。


そして、今年度、2回目のお伺いをさせていただくことができました。
このお伺いには、北田先生が決められた「とても厳しい条件」があったのです。

先生は、子どもたちと、「東日本に行けたら、田川先生をお招きしよう。そこまでは、自分たちで何が何でもがんばって、東北代表に選ばれるだけの演奏にたどりついたら、田川先生に、技術的なことではなく、音楽的なことをたくさん教えていただこう。」と話し合い、「条件付き」のご依頼をくださっていたのです。

「東日本に行けたら、レッスンをお願いします。私も子どもたちも、どうしても田川先生においでいただきたいと思っているので、それを合言葉に練習をがんばっていきます。」と...

私の手帳には、( )付きで、千徳小学校の名前が書かれていました。
「キャンセル覚悟」のご予約でした。

私は、時々、メールで先生を励ましてきました。
「私も北田先生や千徳小学校の子どもたちに会いたいです。お互いの夢が叶うようにがんばってください。応援しています。」と...

東北大会の日、結果発表直後に、すぐ喜びのメールをくださいました。


そして、今回、「夢の再会」を果たすことができたのです。

宮古に行くには、まず盛岡まで新幹線で行き、JR山田線に乗り換えて、さらに2時間かかります。
私の家からは、片道6時間かかる町です。
しかし、北田先生や千徳小学校の子どもたちに会えるかと思うと、少しも遠いと感じずに向かうことができました。

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1両編成のJR山田線です。1日に3~4本しか走らない単線です。


そして、千徳小学校へ。

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先生の情熱は、教材研究にも表れています。

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スコアは、どのページにも、先生だけがわかる「色わけ」と注意、思い、願い、
イメージなどがびっしりと書き込まれています。
さらに、気になっている箇所には「ふせん」が貼ってあり、解決するとはがしていくようです。


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基礎合奏の中では、しっかりとした声で歌も歌います。
全員が、しっかりと口を開けています。 まさに、「本気」です。
「手抜き」している子どもが、ひとりも見当たりません。
たくましい歌声で「ハーモニー」が響きわたります。




今年の曲は、昨年度の『眩い星座になるために・・・』に引き続き、八木澤教司さんの『ひまわり、15本~ヴィンセント・ヴァン・ゴッホによせて~』 です。

このバンドは、一昨年度は、同じ八木澤さんの『プリマヴェーラ』を取り上げ、3年連続で八木澤作品に取り組んでいることになります。

昨年度は、初めてのレッスンということで、様々な「田川流」についてくるのが必死のようでしたが、今年は、始めから最後まで、何の抵抗もなく、私の指導法について来てくれました。

曲の内容や演奏の質的向上のために、私は、「指示」ではなく、「発問」を多くしたり、課題を「理屈」や「専門用語」ではなく、様々な手立てで感覚的にとらえさせたりして導く場面が多いです。

今回も、たくさんの発問をしましたが、「シーン...」として時間が過ぎることは一度もありませんでした。
少し黙っていても、誰かが必ず発言します。
そして、その「誰か」は、どんどん入れ替わっていきます。
4年生も4年生なりの発言で参加します。

去年は、ここまではいきませんでした。

北田先生が、日頃から、「一方的ではない指導」をされてこられた成果です。
演奏自体もすばらしいですが、このような「学び方」をしっかりと実践されてきていることがすばらしいです。

「コンクールに勝つため」だけなら、「一方的に」指導した方が、早く確実なはずです。

北田先生は、まっすぐに「コンクール」に向かいつつも、一番大切な「教育」を見失わない。
だから、私は、応援やお手伝いをしてあげたくなるのです。

子どもたちも、こんな「自らの学び」の場面が大好きです。

そして、話し合いの中から気づき、どんどん演奏の中身を深めていくことができる感覚と力には、圧倒されます。


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ともかく、常に「真剣勝負」で向かってくる子どもたちです。

今回のレッスンは、朝の9時から15時まででしたが、最後まで集中力や体力、演奏の質を落とさないたくましさは、いったいどこからくるのでしょうか。
体育館いっぱいに響きわたるほどの元気な「返事」も最後まで衰えることがありません。


私は、お伺いする前日に、八木澤さんに電話させていただき、この作品の様々な意図や解釈、思いなどについて、たくさんの話し合いをさせていただきました。

奥深い思いを、小学生にわかりやすく、言葉や手立てを変えて伝えていくのが私の役割です。

時間ぎりぎりまで、様々な方法で、この曲を「音楽」として高めていくお手伝いをさせていただきました。


そして、「人間」として...子どもたちに伝えたいこと。
「大人」として子どもたちに伝えたいこと。
このすばらしい作品の「本当のテーマ」...

「容認の心」「受容の心」、あるがままを受け入れること
...それが「愛」ということ。

心を込めて、しっかりと語りました。


子どもたちは、1日のレッスンの最後に、最高に輝いた、そしてどこか大人びた顔で、私のそんな話を聞いてくれました。



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岩手県宮古市立千徳小学校 (指揮:北田智和先生)
「ひまわり、15本」~ヴィンセント・ヴァン・ゴッホによせて~ (八木澤教司)


東北支部代表として、そして、震災被災地・宮古市からの「復興のシンボル」として、全力で『東日本学校吹奏楽大会』に臨みます。

市長さんはじめ、復興に向けて歩む宮古市の全ての人々に、大きな勇気を与えている千徳小学校の子どもたちです。

本番までの日々、心をこめて、君たちだけの「ひまわり」を咲かせてください。

日本中の音楽仲間たちも、きっと応援してくれています。
もちろん、私も。

がんばれ!






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宮古市役所も、立派に改装されました。右は昨年の9月に訪れた時の市役所です。 


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レッスン後、北田先生と海へ行きました。
津波で壊滅的被害を受けた「道の駅」でしたが、仮設店舗ができ、営業再開していました。



少しブルー色したソフトクリームの名前は、『恵みの海』と手書きで書いてありました。

私は、「えっ!」と思ってしまいました。

恐る恐る...「『恵みの海』って言えるようになったのですか?」と店員の方に聞いてみました。
店員の女性の方が、ソフトクリームを手渡しながら、少しだけ笑ってうなずいてくださいました。

まだまだ、すべてを受け入れられているはずはありません。

しかし、宮古の海で生きてきた方々は、やはり海を愛し、海に働き、海と共生したいのだと...

あれだけ怖ろしい体験と被害を負ったにもかかわらず...

高台に移転する方ばかりではなく、海沿いの元の場所に家を建て、店を再開されている方も多いそうです。


「容認の心」「受容の心」...それが「愛」ということ。

先ほど、子どもたちに語った言葉がよみがえってきました。


私自身が、先生から、子どもたちから、そして、宮古の方々から教えられたお伺いでした。


心から...

ありがとうございました。



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| | 2012-10-01(Mon)20:11 [編集]