田川伸一郎のブログ

『KosMos』に拍手

昨日は、若い打楽器奏者の演奏会に行って来ました。
前田啓太さんと峯崎圭輔さんによるパーカッションデュオ『KosMos』です。


IMG_convert_20131010073504.jpg

とてもファンキーなプログラムデザインですが、演奏内容は、実に真摯なもので、新しい打楽器アンサンブルの可能性の追求心、そして、みずみずしい感性と開放的な楽しさに溢れるすばらしいものでした。


お二人のプロフィールです。

前田啓太さん

2006年 武蔵野音楽大学器楽学科打楽器専攻卒業。同大学卒業演奏会出演。
2008年よりドイツ・カールスルーエ音楽大学へ留学。
2011年 同大学大学院修士課程を最優秀の成績で修了。
2011年 バーデン文化財団主催「Kurturfonds Baden コンクール」(ドイツ・カールスルーエ)第1位受賞。
及び受賞者演奏会出演。
第16回日本クラシック音楽コンクール打楽器部門(一般の部)第3位受賞。
日本現代音楽協会・朝日新聞社主催「第7回現代音楽演奏コンクール“競楽Ⅶ”」入選。
2012年 小澤征爾監修、サイトウ・キネン・フェスティバル「兵士の物語」出演。

カールスルーエ音楽大学在学時、フルートのEve Cambrelingら7人とともに「現代音楽のためのアンサンブルTEMA」を結成。アンサンブルメンバーとして「ドイツ公共放送局(ARD)ラジオドラマフェスティバル」に出演。
ブルーマレット(株)主催「第3回ブルーマレットコンサート」出演。
他に、ソリストとして数多くの演奏会・音楽祭に出演。

Jean Geoffroy、小森邦彦、Johannes Fischerのマスタークラスを受講。
これまでに打楽器を安藤芳広、中村功、山口多嘉子、吉原すみれ、Thomas Hoefs、Jochen Brennerの各氏に師事。



峯崎圭輔さん

神奈川県出身。
国立音楽大学打楽器科卒業。
同大学アドヴァンスド・ソリストコース修了。
2005年 TIAA全日本クラシック音楽コンサート優秀賞受賞。
2005年 日本クラシックコンクール全国大会出場。
2006年 日本クラシックコンクール全国大会第二位(一位なし)
2007年 安倍圭子・ジブコヴィッチのマスタークラスを受講。
2009年 ソロパーカッション・デビューリサイタルを開催。
2010年 打楽器エンターテイメントグループ「Funcussion」のメンバーとしてTVに出演。
2012年 ソロパーカッションライブ「Recitalive」を開催。

クラシックのみならず、ドラムやラテン楽器などのポピュラー演奏や、マーチングにおけるスティックパフォーマンスなど多彩なテクニックを持ち合わせ、ソロやアンサンブル、吹奏楽、オーケストラ、ミュージカルなど幅広い分野で活動中。
その他、打楽器アンサンブルの作編曲や吹奏楽指導、後進の指導にも力を入れている。
これまでに打楽器及びマリンバを、上野信一、新谷祥子、奥田真広、木次谷紀子の各氏に師事。
伊勢原 ミュージックアカデミー打楽器&ドラム講師。



お二人は、スイスのソロコンクールを通して知り合い、人柄や音楽観で互いに惹き合うものがあったことから、デュオを組んで演奏活動をされているそうです。

それぞれの世界観=宇宙(cosmo)をもったソリスト同士の競演という意図から、共通のイニシャルKとMを用い、『KosMos』のいう名前にしたそうです。


私は、富山の高校にレッスンにお伺いさせていただいた時に、前田啓太さんと知り合いました。
ちょうど富山のご実家に帰られ、この高校バンドの打楽器指導に入られるタイミングと同じになったのです。

前田さんは、「今日は、田川先生の合奏レッスンですから、私はサイドから打楽器のフォローをさせていただきます。」と。
せっかく打楽器レッスンをしようと思ったのに、何だか知らないオジサンが指導に来ていて...と思われたかもしれません。
私も、プロの方がご指導されたのですから、ご本人がいらっしゃるところで、素人の私は打楽器のことは何も言ってはいけないかなとちょっと困ってしまいました。

それでも恐る恐る、「すみません。打楽器がちょっと大きいように思いますが。あと、とても上手いのですが、打楽器だけで世界を作り過ぎて、打楽器コンチェルトのようで...管楽器とのブレンド感も足りないような...あっ、違ったらすみません。」と、何とも自信なく、発言してしまいました。

すると、そんな自信のない素人のオジサンの言葉にも、彼はすぐに対応してくださり、打楽器のメンバーにわかりやすく注意を出したり、マレットを換えたり、私の伝えたいことが最適な形で音になるようにと、具体的な指導をしてくださいました。
打楽器のメンバーたちも、私のアドバイスやそれを伝えた前田さんの指導に、「はい!!!」と、とても素直に従ってくれました。

「あの...もし違っていたら、後で元に戻してくださいね。顧問の先生のご意見も伺って...。せっかくご指導されたのに、本当にすみません...」

昨日の演奏会で、目が点になるほどの技術と音楽性を披露していた前田さんを見て、私は、あのレッスンの時の自分がますます恥ずかしくなってしまいました。

こんなすごいプロの方が指導されたものに、ケチをつけてしまったのか...いや、ケチをつけたのではない。ちょっとアドバイスしただけで...などと自分に言い訳していました。

レッスン後、彼は、とても丁寧なお礼のメールをくださいました。

「田川先生の合奏指導を拝見させていただき、合奏の中での打楽器のバランス、合奏全体の表現の導き方など、大変勉強させていただきました。今後またご縁がありましたら、ぜひ先生のレッスンを見学させていただけないでしょうか。....本当にありがとうございました。」

私の方からお礼やお詫びをしなければならなかったのに、私はとても驚き、感動してしまいました。

帰宅して、彼のHPを覗いてみた私は、彼の経歴や実績を知り、びっくりしました。
こんなすばらしい方が、私の拙いレッスンなんかに、「勉強になりました。」と、先にお礼のメールをくださるとは...
きっと「社交辞令」なんだと思いつつも、それでも、このように「相手を立てられる」ところに、彼の人柄を見るような思いがしました。

そのHPで、昨日の演奏会のことを知り、伺わせていただいたのです。

メールでチケット購入についての質問をさせていただいた時も、「田川先生のような方に、私たちの演奏を聴いていただけるなんて。まして、先生からお代をいただくなんてできません。」と...。
「前田さんは、プロとして演奏会をされるのですから、私はきちんとチケットを買って聴かせていただきます。」とお返事しました。

こんな謙虚な姿勢に、私は、「この人は本当にすごい人だ」と思い入るばかりでした。


そして迎えた昨日の演奏会でした。
見にくいかもしれませんが、プログラムです。

プログラム_convert_20131010073535


このお二人のテクニックは、半端ではありません。

そして、この「息の合い方」は何でしょうか!!!

1曲目の『Eight on3 and Nine on2』は、特殊楽器を使わないシンプルな曲です。
しかし、13個の太鼓を、時には一人で演奏しているように細かいリズムをコンビネーションプレイしなければならない箇所もあり、息と技術を試される難易度の高い曲ですが、この1曲だけでもこのお二人の凄さがわかりました。

『Road Runner』では、マリンバとビブラフォンの2台を二人が、絶好調のパフォーマンスを加えながら、目まぐるしく移り変わる古いディズニー映画を再現するごとく演奏されました。

「真剣にふざけます」とアナウンスし、会場の笑いを取っていましたが、これは良い言葉です。
中途半端な楽しいモードや、見ている方が恥ずかしくなるようなパフォーマンスなら、やらない方がいいのです。

日本人は、外国の方に比べると、どうしてもこういう面では「恥ずかしさ」が見えてしまうことが多いようにも感じますが、この二人は若さや天性とも思えるタレント性も手伝い、心から楽しめるステージを作り上げていました。


コンサートの最後は、加藤史崇氏による委嘱作品『たんぽぽとコンクリート』でした。
これは、文芸と打楽器アンサンブルをコラボしたもので、二人が演奏しながら同時に語りもしていくという、スーパーセッションでした。

ナレーターがいるわけではありません。
しかも、全曲、全台詞を暗譜で演奏し語っていました。

語りをするだけでも大変なことです。
とても表情豊かな語りでした。
そこに、同時に音楽が付く、そして、語りそのものも時には二人のアンサンブルになっているのです。

こういうスタイルの演奏を、私は初めて聴きました。
感動というより、驚きでした。

頭の中がどう出来ているのか、覗いてみたい気もしました



まだお二人とも20代の若さです。

まだ「世界的に有名なプレイヤー」とは言えないかもしれません。

しかし、このお二人が持つ「世界観」は、打楽器の音楽を確実に大きく広げていく「無限の可能性」を感じさせるものでした。

これからも、今の謙虚さとバイタリティと自由奔放な挑戦心を大切に、ますます躍進して行ってほしいです。

すばらしいひとときをありがとうございました。



P1230816_convert_20131010073408.jpg



スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2013-10-10(Thu)19:26 [編集]