田川伸一郎のブログ

兵庫・大阪で (その2)

次に、大阪府の中学校バンドでの練習をご紹介します。

このバンドは、座奏だけでなく、マーチングにも熱心に取り組んでいらっしゃるそうです。

そのせいもあるのか、生徒さんたちの「声」がとても生き生き、元気で、体力を感じさせるものでした。

先生は、笑顔が似合う「イケメン」の男の先生でした。
私が「先生の指揮で聴かせてください。」と申し上げると、「ああ、めちゃ緊張する~」と生徒さんたちの前でおどけてみせる、「生徒の目線」で「生徒と一緒に」進もうとされる先生でした。

生徒さんたちは、そんな素敵な先生と一緒に音楽するのが嬉しくてしかたないといった感じの「幸せ笑顔」でした。

そんな生徒さんたちは、目が合うと、ニコッとしてくれます。
お昼の話をしていたので、ちょっと顔を突っ込み、「先生は、おにぎりならやっぱりシャケだな。」と言うと、「やっぱり、シャケですよね!!ねっ!」と、すぐ友達状態に。

先生の明るく解放的なお人柄が、そのままこのバンドの空気になっているようでした。
素直に「音楽」できる雰囲気に溢れていました。


33.jpg

このバンドでは、コンクール府大会に向けて、課題曲と自由曲の2曲のレッスンをしました。

課題曲のマーチ(『オーディナリー・マーチ』)は、ゆっくりていねいに練習を積み重ねてきたことがわかる演奏でした。
1音1音の響きが、とても豊かです。
ゆっくりていねいに練習してきたバンドだけが持てる響きです。


レッスンでは、「その1音1音の豊かな響きを大切にしながら、マーチらしいシャキっとした演奏」を目指すことにポイントを設定しました。
・フレーズ内の重心の置き方やエネルギーのもって行き方
・低音パートで主旋律を演奏する時の効果的な表現の仕方
・重くならないTrioの演奏の仕方
・軽やかなフルートにブレンドするタンバリンの演奏方法
・後半部分をいっそう華やかにするアクセントの感じ方
・終曲を盛り上げる打楽器の奏法
・・・・


子どもたちの演奏が、実に「マーチ」らしくなりました。
マーチングにも取り組んでいる皆さんですから、ぜひマークタイムをしながら練習すると、いっそうはっきりしたビート感が感じられるようになると思いました。


休憩の後は、自由曲を聴かせていただきました。

とても楽しい管弦楽からのアレンジ曲です。


「アレンジ曲」を演奏する時に、気をつけなければならないのはテンポ設定です。
管弦楽で演奏するテンポどおりに演奏したのでは、少々重く聴こえてしまうのが吹奏楽の弱点です。
弦楽器特有の「スピード」と「軽さ」、「ボウイングによるメリハリ」がないことが原因です。
特に、「音のスピード」や「フレーズ表現のスピード感」が不足しがちな小中学生では、テンポ設定を少々速めにして、曲の持つスピード感を出した方が聴きやすいと私は考えています。


このバンドが演奏している曲でも、指定テンポにこだわらないテンポ設定を工夫しながら、練習を進めてみました。生徒さんたちが一番演奏しやすいテンポ、乗りやすいテンポ、そして崩れないテンポを演奏しながら、見定めていきます。
それが、ピタリと決まった時に、この曲の「味」、このバンドの「味」が共に生きてくるのです。

とてもおしゃれな演奏になりました。

「今日はこのテンポで演奏しましたが、明日からは君たちのことを一番良くわかっていらっしゃる顧問の先生が、君たちに一番合ったテンポや味付けを考えて指導してくださいますから、先生と一緒に最高の味を出して演奏してください。」とお話しして終わりました。

それにしても、「よく笑うバンド」でした。
ふざけて笑っているわけではありません。
私が、ほんのちょっと楽しく導くと、それを10倍楽しみ、10倍返してくれるのです。

お別れの前、生徒さんからも、「先生、めちゃ楽しかったです!ありがとうございました!」と。

こちらこそ!楽しい時間をありがとう!

34.jpg

校門に並んで見送ってくれたみんな!
「田川先生!大好き!!!」と叫んでくれたみんな!

ありがとう!


35.jpg


大阪府大会でも、その明るさを発揮して、素敵な演奏をしてきてください!



次にお伺いしたのは、大阪府の高校バンドです。

このバンドの指揮者は、外部講師の方でした。
しかし、顧問の先生方ととてもよく連携が取られているようでした。
そして、この外部講師の先生は、このバンドのOBということでした。
つまり、このバンドのメンバーは、生徒であると同時に、この先生の大切な後輩たちだということです。


この学校の生徒さんたちは、とても真面目で落ち着いている感じでした。
お伺いした時には、個人練習をしていました。
長い廊下の窓際に並んで個人練習をする生徒さん、窓もない小部屋にこもって、汗を拭きながら音程合わせをする生徒さん、準備室で何やら打ち合わせをする生徒さん...
それぞれが、自分と向かい合って合奏に備える姿が立派でした。

合奏のスタートも、落ち着いた雰囲気でした。

36.jpg

このバンドも、府大会に向けて、課題曲と自由曲の練習をしました。

課題曲は、Ⅰ『迷走するサラバンド』を選んでいらっしゃいました。
先生は、「もう少しメリハリのある演奏にしたい」とおっしゃっていましたので、その点をポイントにしてレッスンを進めました。

・場面の特徴を生かすテンポ設定、音形
・フレーズの重心の設定とうねりある表現
・パート間のバランス調整による立体感
・場面の移り変わりの「運び」
・各部分のコントラストを生み出すための工夫
・・・・・


など、私流の解釈で、「今日だけの演奏」をしていただきました。

客観的に聴いていただき、参考にできるところは、生かしていただければと添えました。


自由曲は、昨年発表されたばかりの邦人作品です。

この曲は、とてもシリアスな内容を持った曲で、曲の内容に照らし合わせて、「音符」の意味を考えながら演奏する必要があります。

そこで、私は、逆説的なレッスンをすることにしました。

生徒さんたちには、「私は、この曲をよく知りません。なので、皆さんからこの曲の意味を教えてもらいたいと思います。私に、わかった!と言わせるように演奏してください。」と話しました。

「クラリネットの方、そのメロディーは1拍目から始まっても音楽としては成立すると思うのですが、なぜ1拍前からアウフタクトのタイで始まっているのでしょうか?作曲者のその1拍のアウフタクトにどんな思いを託したのでしょうか?」
・・・
「あの...悲しみを増すようにという...」
「では、それが伝わるように吹いてみてください。」
・・・
「すみません。その吹き方ではわかりません。何も変わっていないように思えますが。」

立って、そのフレーズを「私にわかるように」演奏してくださいと、投げかけました。
何度も何度もやり直しをしました。
少しずつ、何かが変わってきました。
記号では書けない表現です。

37.jpg


「バスクラリネットの方、そこにCの伸ばしが入るのは、どんな意味があるのでしょうか?」
「ホルンの方、そのフレーズは何を?その三連符はどのように吹きますか?」

おそらく、音程やリズム、音色といったことに集中して、これだけのすばらしい音をつくってきた生徒さんたちにとっては、経験のない練習だったかもしれません。

「もっと気持ちをこめて...」「ハイ!!!」
「もっと歌って...」「ハイ!!!」
「もっと...」「ハイ!!!」
「もっと...」「ハイ!!!」

そうではないと思うのです。
「楽譜」から「思い」を読み取り、それを生かすためにどのように表現すればいいかということが大事なのだと思います。


このバンドの生徒さんは、演奏レベルが高いので、きっとこういった「楽譜」の読み込みによって、この曲の「ドラマ」をいっそう味わい深く感じ取り、記号に書けない表現をしていけることだと思います。

指揮もせず、指示もせず、生徒さんたちを困らせ、ひたすら「待つ」という私の指導方法に共感して、一緒に「待って」くださった先生。
「こういうご指導をしていただきたかったんです。生徒たちが何かを感じて、心から表現してほしいと思っておりますので...」とおっしゃってくださいました。


生徒さんたちも、「いじわるオジサン」のレッスンに、よくついてきてくれました。

特に、苦労したクラリネットさん!
よくがんばりました!

君たちと一緒に「ああでもないこうでもない」と格闘していたら、この曲がとても好きになりましたよ。
そう思わせてくれたのは、あなた方です。

コンクールまで、「ああでもないこうでもない」と、話し合いながら、「楽譜が望んでいる表現」を模索していってください。


38.jpg

一緒に濃い勉強をさせていただきました。

お招きいただき、ありがとうございました。












スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する