田川伸一郎のブログ

経験が育てる心

昨日は、神奈川県の高校でのレッスンでした。
その帰りの電車の中でのことです。

すぐそばにいた会社帰りと思われる男性2人と女性1人の方の会話です。
女性の方は、20代半ば、男性は30代半ば位のように見えました。

話題は、ソチでおこなわれている冬季オリンピックの話でした。

様々な競技についてのコメントは、まあ普通の内容でした。

その後、「えっ!」と思う話の展開に...

それは、女性の口から出た話でした。

-----------------------------------------------------------------

...10代の子が、インタビューされて、「...に感謝して」とか、よく言いますよね。「親に」とか「コーチに」とか「仲間に」とか...
「〇〇のおかげで、今の自分があるので感謝しています」なんて聞くと、何だか気持ち悪くて...
あの子たち、すごいって思いますよ。私は10代の頃は必死に勉強してただけだし、誰かに感謝するとか、そんな気持ちなんて私にはなかったですよ。学校の先生や塾の先生に感謝なんてしたことないし、仕事で教えてるんでしょと思ってました。

オリンピックだけじゃなくて、色々な場面で「感謝して」なんて言っているのを聞くと、私はすごく違和感感じるんですよね。やらせっぽいなとか、思っていなくても、そう言うように教育されているんじゃないかとか。

だから、若いのに一流のことやっている子って、心が素直に育っていない感じがするんですよ。
本当は感謝なんかしてなくて、自分さえ良ければそれでいいと思っているに違いないのに。

一緒にいた男性2人は答えに困ったように、さっきまでにはなかった「間」ができましたが、反論することもなく、軽く受け流す反応をしていました。

------------------------------------------------------------------


私は、しばらく、「じぇ...?」という感じでした。

そのうち、この女性がかわいそうになってきました。

小さい頃から「塾漬け」になり、成績だけがすべて、受験に合格することだけがすべて、そう導く大人たちは「仕事」として自分を導いている...先生も親も...

そんな時間をずっと過ごし、「感謝する」という経験は、何か欲しい物をもらった時などの「具体的な瞬間」だけのものだったのでしょう。
そして、それは「感謝」などという深い思いではなく、「ありがとね」程度の軽いものだったのだと思います。


「今生きている時の価値」「今出会っている人の価値」「自分に向けてもらえる誠意」...そういう感覚がないまま、心が柔らかい多感で大切な時期を、それこそ親から押し付けられた「人を蹴落として受験に勝つことが最高の幸せ」という偏った価値観に洗脳されて邁進する子どもたち。
夜遅く、塾帰りの小学生が、電車の中でスナック菓子をこぼしながら食べ、ゴミを散らかして平気で降りていく哀れな姿。

その女性の「子ども時代」が見えるような気がしました。

この女性に説明するのは、かなり難しいなと、私は思いました。
他人でよかった...

ついさっきまで、同じ空間と時間を共にしていた一生懸命な高校生たちとのギャップがあまりに大き過ぎて、「フッ」と鼻で笑うしかできない自分がいました。



そういえば、私の知り合いで会社の人事担当をしている人が、こんな話をしていました。


学生時代に部活動、特にチームプレーをやってきた人は、会社に入ってすごく使えるんですよ。
近年、私の会社にはなぜか吹奏楽部出身の社員が多いんです。
耐えるとか協力するとか他人のミスをさりげなくフォローするとか、どこでこういうことを教わってきたんだろうと思うような言動が取れるんです。
あいさつとか返事とか、「申し訳ありません」とか「ありがとうございます」とか、そういう当たり前のことが、会社に入ってきた時点でほとんどできているので、再教育の必要がなく、ささやかなことでも褒められるからますます自信が増して仕事ぶりが良くなる...

逆に、すぐ折れる、不平不満が多い、他人のミスについて見て見ぬふりをする、それを注意しても「私には関係ありません」と居直る、自分のミスを責められると責任を他人に向ける...そんな社員に話を聞くと、部活動の経験がほとんどなく、特にチームプレーをしてきていない子が多いんです。
受験勉強だけで育った子は、いい学校を出ていても、会社に入ってからの教育がなかなか大変です。
本人も、辛いでしょうね。一流大学を出てきたのに、人間としては劣等生扱いを受けるんですから。
残念ながら、そういう理由で辞めていく子もいるんですよ。きっと他の会社でもなかなか厳しいでしょうに。

吹奏楽部出身の社員が多いのも、偶然ではなく、「吹奏楽部出身なら使えるだろう」というこちらの安心感も実はあるんですよと、こっそり教えてくださいました。


今の時代、吹奏楽部を指導されている先生方には、小学校・中学校・高校にかかわらず、「演奏が上手ければそれでいい」という方は、全くと言っていいほどいらっしゃらないと思います。(ほんのたまに出会いますが...)

ほとんどの先生方が、「吹奏楽を通して、豊かな人間に育ってほしい。」という願いを持ってご指導されていらっしゃると思います。

礼儀正しく、心優しく、そしてたくましく...人間としての本当の「力」を備えてほしいと...

だから、演奏以上に、そういった「心の持ち方」についてのご指導が厳しい先生、子どもたちの心無い言動に悲しむ先生が増えているのだと思います。

そして、「人間教育を大切にした吹奏楽指導」が、社会に出てからの「人間力」につながっていることも確かなようです。


「やっぱり吹奏楽っていいよなぁ。
吹奏楽に打ち込んでいる先生方や子どもたちを、ますます大切にしていこう。」

そんなことを改めて考えた昨日の帰り道でした。


ソチの選手たち、ふぁいっ!

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2014-02-13(Thu)19:34 [編集]