田川伸一郎のブログ

がんばれ!! さわやかでたくましい外房の海風のように

今日は、外房にある高校の吹奏楽部にお伺いしてきました。

外房とは、房総半島の東側、大きく太平洋に面している側のことをいいます。
内房は、房総半島の西側、東京湾に面している側です。


海に近いこの高校の吹奏楽部は、15人の小さな仲間たち。しかし、おつき合いを始めた昨年の秋から3月までは、たった5名のもっと小さな部活でした。顧問の先生から、「たった5人しかいないのですが、真面目に努力する生徒たちなので、県の連合音楽会、卒業式と入学式で何とか演奏させてやりたいのです。でも、この人数、この編成でどんな曲を演奏すればいいのかわからなくて。」とご相談があったことからおつき合いが始まりました。

どんな人数や編成であっても、そこに部員がいる以上、発表する喜びを味わわせてやりたいとおっしゃる顧問の先生の愛情に心打たれ、私は、連合音楽会用に1曲、卒業式と入学式用に4曲をアレンジして差し上げました。連合音楽会前はお伺いする時間がなく、録音を聴いての遠隔指導。卒業式前には1回お伺いすることができました。

初めてこのバンドに出会った日、生徒たちに「人数が多いバンドをうらやましく思うかもしれないけれど、たとえば200人部員がいるバンドなら、1人休んでいても、気づかれないこともあるかもしれないね。5人の部活だと1人いないと、『どうしたんだろう?』とすぐに先生も仲間も気にしてくれるよね。また、一人一人の責任や存在がとても大きいから、手抜きができないよね。人数が少ないということは、実は素晴らしいことなんだよ。君たちが5人で心を合わせて練習していけば、卒業式でも入学式でも、その気持ちは必ず伝わるから。」と話しました。

秋から春までの一番くじけそうになる時期を5人だけで活動してきた彼女たちは、1人も辞めることなく、真面目に努力し続けました。

卒業式の後、顧問の先生から、「3年生の先生方から、『生演奏で送ってくれてありがとう』と言っていただけたんです!」と弾んだ声でお電話がありました。「良かった!先生!入学式もその調子で!」「はい!」

そして、今年、1年生が10名も入部して来たのです。経験者もいますが、全く初めて「スイソウガク」に触れる生徒や楽器が替わって初心者状態の生徒もいます。「全く初めて」というクラリネットの女の子に「どうして吹奏楽部に入ったの?」と聞くと、「見学に来た時に、先輩たちがとても優しくて、部の雰囲気も良かったので...」と。 5人の「先輩たち」の顔がほころびました。

今日の練習は、打楽器の基礎練習から始めました。「4つの重要基本ストローク」、「リズムを音楽的に感じて基礎打ちをする方法」の2つです。打楽器のメンバーは1年生2名。先輩はいません。男の子は、私がアドバイスする一言一言に「ハイ!」ではなく「ハイ!!!!!」位の返事をし、少しでも身につけようと夢中です。2人とも、私が管楽器の指導に回った後も、黙々と練習机を打ち続けていました。
管楽器は、ひとりひとりの奏法チェックから入りました。皆でひとりひとりの吹き方に目と耳を向け、良さと課題を皆で確認していきます。少しの進歩を皆で喜んであげながらの練習が進みました。時々、冗談をはさむとみんなで大笑いして、練習に戻るとさっと真剣な目に戻って。小さいバンドならではの家庭的な雰囲気です。
このバンドには、強制された「儀式的な行動様式」はありません。返事も、うなずきも、笑いも、発言も、すべてが自然で、本音なのです。そして、素直で純朴で小さなことにも感動できて...一緒にいるだけで幸せになるような、実に素性の良い生徒たちです。途中、練習見学にいらしてくださった校長先生にも、本心からそう申し上げました。校長先生も「そうです。この学校の生徒は本当にいい子たちばかりですよ。自慢の生徒たちです。」と。ご自分の学校の生徒のことを胸を張って自慢できる校長先生、最高に幸せだと思います。

後半は、この小さなバンドが挑戦する千葉県吹奏楽コンクールの曲の合奏練習です。
顧問の先生からひとりひとりの実態を伺い、このメンバーの良さが生きる曲をと考え、スペインの作曲家イサーク・アルベニスのピアノ曲をアレンジして提供しました。このバンドのためだけの楽譜です。まだ練習を始めて間もない段階なので、音を確認しながら、「ゆっくりの部分でも音楽としてのスピード感を失わないための練習方法」「大きなフレーズを表現するための拍子とリズムの感じ方」などをアドバイスしていきました。技術の壁を乗り越えた時、この生徒たちが「ロボット的」ではなく「音楽的で人間的な」演奏をしてくれることを願って。今日とらえた実態を元に、一部のパートのアレンジを変更してあげることにしました。ひとりひとりの力に合った易し過ぎず難し過ぎない楽譜を演奏した時にこそ、そのバンドとしての最高のサウンドが響かせられ、達成感を感じながら楽しく演奏できると考えているからです。

練習後、準備室で顧問の先生とお話ししている間、いつになっても音楽室からは数名の楽しそうな笑い声が聞こえてきます。
「みんな、ずいぶん楽しそうに余韻を味わっているんだね。」「そうでなくて、田川先生をお見送りしたくて...。」と。
外は、もう真っ暗。 玄関まで送ってくれると、部長の女の子がサッと靴べらを差し出してくれました。
家庭で、学校で、部活で、この子たちはルールではなく、自然に「気づかいの仕方」を身につけているんだな。ほんとにいい子たちだな。

また7月にお会いできる予定です。 

生徒たちの笑顔の見送りに温かい気持ちでいっぱいになりながら、2時間以上かかる道を走り出しました。

がんばれ!!みんな  さわやかでたくましい外房の海風のように...

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