田川伸一郎のブログ

4ヶ月の「本気」のレッスン

昨日の日曜日は、富山県の中学校の演奏会にお伺いして来ました。

前日の夜、こっそり移動して...
ほんとに、「こっそり」です。

そう、顧問の先生にも生徒さんたちにも秘密の「サプライズ訪問」だったのです。

このバンドとは、3年目のお付き合いとなります。
私を信頼し、真剣に教えを求めてくださる先生に、私は、「子どもたちの心を育てること」を伝え続けて来ました。

全国大会を目指すレベルの学校です。
過去に全国大会に出場したこともある学校です。

初めて出会った時の先生は、「コンクールで勝つこと、全国大会に子どもたちを連れて行くこと」を、一番の目標としてご指導をされているように見えました。
生徒さんたちは、とても上手で、よくトレーニングされたバンドでした。

私は、「技術」や「コンクール」とは違い、様々な「教育的視点」からの吹奏楽指導のあり方を先生に語り続けました。
そして、生徒さんたちに対するレッスンも、「技術的な内容」はほとんどなく、「音楽」と「心」を中心に進めていました。
そして、楽譜をお持ちし、「合唱」のレッスンも取り入れました。

先生は、そんな私のレッスンを積極的に入れてくださるようになりました。

こんなに上手なバンドにもかかわらず、このバンドは、「演奏会」をしていませんでした。
コンクールで全力を尽くし、全国大会に進めなかったら、10月上旬の学校祭の演奏で3年生は引退でした。

何度も「演奏会を」と提案しましたが、先生は、「難しい」と眉をひそめるばかりでした。
演奏会が出来るほどのレパートリーを作ることの余裕はないと...
コンクールのための練習が中心となっているこのバンドでは仕方がないことだったかもしれません。

しかし、昨年度の秋、私の想いが神様に届いたのか、PTAから「家庭教育学級」として演奏会をしてもらえないだろうかという依頼が届き、先生は実施に踏み切る決断をされました。
それまでに演奏してきた曲などを集めて、出来る範囲で取り組みました。

その日のブログです。
http://schoolbandsupporter.blog24.fc2.com/blog-date-201310-9.html

コンクールでは得られない大きな感動、地域の方々が笑顔で、あるいは涙を流して喜んでくださった姿...
お年寄りが、「ありがとう。元気をもらって寿命が延びましたよ。来年もその先もずっと聴きたいから、長生きしなきゃ。」と話してくれたこと...

お客様の大きな声援や感動から、逆にパワーをいただいていることに気づいた先生と生徒さんたちでした。
「金賞より価値がある本当の音楽の力」...先生も生徒さんたちも、そんな音楽のすごさを求めて活動する姿勢に変わって来ました。


今年からは、他からの依頼ではなく、吹奏楽部が主催して「演奏会」をすると決め、意欲的にスタートしました。
昨年秋の演奏会の後は、練習のスケジュールも、コンクールを中心に据えたものではなく、1年間かけて「演奏会」のプログラムをつくる形に変わって来ました。

今のメンバーでのレッスンは、昨年の演奏会を終え、新チームになったばかりの頃、冬、そして春と、3回ありました。
私のレッスンは、やはり、「技術」ではなく、「音楽」や「心」が中心でした。
先生も生徒さんたちも、私の教えを真っ直ぐに受け止めてくれながら前進しました。


今年度初めてのレッスンは、6月でした。

もちろん、コンクールに向けてのレッスンです。

わざわざホールを借りての練習...
しかし、何かいつもと様子が違います。

集中力がない、反応が鈍い、向上心が感じられない...
このバンドの「恵まれた環境」の全てがあたりまえのようになっているんだ...

まさに、「魔の6月」を絵に描いたような状態でした。

私は、汗を流して頑張りましたが、それに全力で応える気概が感じられず、ゆるんだ態度も直らず...
途中でついに...切れました。
「先生、すみません。帰ります...」
私は荷物をまとめ始めました。

皆は、黙って、私の様子を見ていました。
顧問の先生が、「黙ってていいんですか?先生は帰られるとおっしゃっているぞ。」

部長さんが立ち上がり、「田川先生、すみませんでした。部長の私がしっかりしていないから、みんながこんな態度になってしまって。みんな、ごめんなさい。私がダメな部長だから、みんなの態度まで悪くなってしまって...」
・・・・・沈黙が続きました。

そのことで、私の感情は限界を越えて、「制御装置」はぶっ壊れました。

「なんで、そこで誰も何も言わないんだ。『あなたのせいじゃない。私たちに謝る必要なんかない! 謝らないで!』って、なぜ言えないんだ! こんなに頑張っている部長をなぜ守ってやろうとしないんだ! 黙っているっていうことは、部長のせいだと思っているんだな! そうか、こんな冷たいチームだったんだな。 わかった!」と...私は出て行きました。

生徒さんたちは、やっと動き出し、私を追って色々言っていましたが、私の「制御装置」は直りませんでした。

外部の人間がここまで引っ掻き回してしまい、やり過ぎではないと思われるかもしれませんが、私は、顧問の先生のこれからのご指導を信じ、ここまで追い詰めることで生徒たちの何かが変わるに違いないと信じた上でのことでした。
しかし、「ご縁」が切れるのは覚悟の上でした。

その後、先生は、本気になって、このチームの「心」を磨くことに全力を傾けられました。
何が足りないのか...何を求め、どう育てたらよいのか...

生徒さんたちも、あまりに衝撃的だった出来事から、本気になって自分たちの在り方を考えるようになりました。
ミーティングも増え、ひとりひとりが考えや想いを持つこと、それを伝え合い、わかり合うことを大切にするようになりました。
互いに本気でぶつかり合うようになりました。

もう「ご縁」が切れると思っていたのに、先生は、そんな前進の様子の報告をメールや生徒たちの作文などで伝えてくださいました。
しかし、私は、あえて何の返信もせず、黙って見守り続けました。

それでも、先生は、時々、演奏の録音や近況を伝えてくださいました。
先生は、私の「荒療治」に対する感謝の気持ちも伝えてくださいました。
大切な生徒さんたちをあんなに怒鳴りつけて帰ってしまったにもかかわらず、先生は、私が生徒さんたちに本気で向き合っていた気持ちだけを心に残して、「ご縁」をつなぎ続けてくださいました。

ブログメールで、私に気持ちを伝えてくれる生徒さんもいました。

そんな日々が過ぎ、今年の夏のコンクールも終わりました。


私は、このバンドの演奏会の日を手帳に書いたままにしてありました。
そして、この日にご依頼のあった仕事は、なぜか丁重にお断りしている自分がいました。

先生や生徒さんたちの「本当の変容」の様子が、私の心を動かし始めていたのだと思います。
そして、あんなにがっかりし、あんなに怒って別れたにもかかわらず、ずっと心配し続けている自分がいたことも確かです。


そして、このチームの1年間のまとめである演奏会の日に、先生と生徒さんたちの元へ伺う決意をしたのでした。
前日の午後、埼玉でのレッスンの後、列車の切符を買って富山へと向かいました。

昨日の午前中、会場に向かうと、リハーサル中でした。
曲が終わった時、ステージへ...

生徒さんたちは、私の姿を見て、固まり、唖然としています。
先生は、気づかず、照明係に指示を出しています。
生徒さんたちの視線に、先生も私を見つけ...
「えっ! あの...、先生...」

ゆっくりと私の所に来られた先生の手を、私はしっかり握りました。
「先生、あの日から夏のコンクール、そして、今日の演奏会までよく頑張られましたね。偉かったですね。」
先生は、黙って涙ぐんでいます。
生徒さんたちはそのまま何が何だかわからず、固まって...

「6月のレッスン、始めのあいさつはしたけど、まだ終わりのあいさつをしていなかったよね。あの日から今日まで、君たちが本気で努力して来た今日までの4ヶ月全てが、僕の本気のレッスンでした。だから、今日は、君たちが4ヶ月のレッスンをきちんと受けられたかどうかを確かめに来ました。今日の演奏会を皆で成功させて、しっかりとレッスンの終わりのあいさつをしましょう。」

私の気持ちを聞いて、皆の顔がやっとほぐれ、笑顔や涙...それぞれの素直な気持ちの顔に変わりました。

「さあ、今日は、この後のリハーサルも、本番も、しっかり見ているからね。みんな、心を込めて真剣に!」
「はいっ!」

意気揚々とリハーサルに戻りました。

私は、じっと皆の動きや互いの関わり、そして演奏に目と耳を向けていました。

よくここまで...先生も生徒も、皆が大きく大きく大きく成長したことがわかりました。

休憩時、3年生が集まって、私の所に来てくれました。
真っ先に来て、「先生、あの日は本当にすみませんでした。」と一番に話してくれたのは、課題曲のマーチの足踏み練習や歌合奏をかったるそうにやっていて、私にきつく注意された男の子でした。

「先生、今日は来てくださって、本当にありがとうございます。私たち、あれから本気で話し合ったり、ぶつかり合ったり、支え合ったりして、いい仲間として進めるようになれました。本気で頑張ってきました。」...部長さんが話してくれました。
みんな、ひとつ大人になった顔でじっと私を見つめてくれていました。

私も、笑顔で話し、リハーサルの続きに送り出しました。


そして、本番...
1500人収容のホールが、2階席まで、たくさんのお客様で埋まっていました。


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ロビーコンサートは、サックスアンサンブルと、大胆にもクラリネットソロです。

第1部 <クラシカルステージ>
♪行進曲「勇気のトビラ」
♪シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」
♪歌劇「イーゴリ公」より ダッタン人の踊り
♪ひまわり15本~ヴィンセント・ヴァン・ゴッホに寄せて

第2部 <ポビュラーステージ>
♪アフリカン・シンフォニー
♪ラプソディー・イン・ブルー
♪3年生の企画ステージ (楽しい音楽クイズでした)
♪ハナミズキ(3年生の演奏)
♪恋するフォーチュンクッキー(一般の生徒も多数ダンスで登場)
♪合唱『レッツ・サーチ・フォー・トゥモロー』
♪Choo-Choo Train
♪アナと雪の女王~シンフォニックハイライト~
♪エル・クンバンチェロ

アンコール
♪宝島


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私と互いに「信頼の糸」で結ばれている指揮者の先生です。

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中学生とは思えない部長さんです。 
本当によく努力し、皆をここまでまとめ上げました。


部員たちは、本気になって、1曲1曲を演奏し、この1年間に身につけた力、そして、失敗からも学んだ大切な「心」を、豊かなサウンドに乗せて、お客様に伝えていました。
小さい子どもたちから、杖をついていらしたお年寄りまで、ある時は真剣に、ある時は笑顔で、そして、手拍子をしながら...
ステージと客席がひとつになって、「音楽っていいなぁ」と感動できたすばらしいひとときになりました。

私の近くにいらしたお年寄りのご夫妻も、笑ったり、涙ぐんだり、不自由そうな手を一生懸命動かして拍子を取ったりしながら聴いていらっしゃいました。

演奏会後、外でお見送りをする部員たちに、「ありがとう」「良かったよ」「来年も楽しみにしているよ」...と温かい声をかけてくださりながら、皆さん、幸せいっぱいの顔でお帰りになりました。

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お見送りをする部員たちも幸せいっぱいでした。


そして、最後のミーティングです。

私は、あの6月からの4ヶ月にわたる長い長いレッスンを、皆がしっかりと受け止めて成長してきたことを認め、心を込めてほめ、語りました。
そして、「これで4ヶ月の本気のレッスンを終わります」と告げ、終わりのあいさつをしっかりとしました。

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          いつもとは違う、特別な意味と気持ちの「ありがとうございました」でした。

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3年生たちです。 このバンドに初めて伺った時は1年生でした。
数えきれないほどの体験を通し、大きく成長しました。


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「本気~一人一人の想いをひとつに感動し合える音楽を~」...君たちが決めた今年度の「目標」が、この演奏会でも大きく花開きました。
途中は、失敗も、ぶつかり合いも、たくさんあったけれど、今こうして、ひとつになれた喜びを味わえてよかったね。
苦しみ、悩み、でも、いつも君たちのことを思い、ここまで育ててくださった顧問の先生には、心から感謝しなさい。
そして、これからも、「音楽を通して、いつも誰かを幸せに出来る」...そんなバンドであってください。

がんばれ!
橘 恭幸先生&高岡市立芳野中学校吹奏楽部



*学校名、顧問の先生のお名前、そして、レッスンでの出来事の記述は、顧問の先生の許可をいただき、書かせていただきました。
*上記写真は、関係者よりご提供いただきました。転載等はご遠慮ください。



芳野中学校吹奏楽部は、すみだトリフォニーホールでの「日本管楽合奏コンテスト全国大会・中学校B部門」に出場します。
応援よろしくお願いいたします!


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