田川伸一郎のブログ

富山県の中学校バンド

この土日は、大学のセンター試験でしたね。
レッスン校の高校生たちも、多くの生徒さんたちが受験したようです。
良い結果が得られますように...

土曜日、私は、東京都での2校のレッスンを終えてから、越後湯沢経由で富山に向かいました。

越後湯沢からの特急「はくたか」は、最終列車。 新潟県内は、雪と風で徐行運転の遅れも少々。
目的地、高岡のホテルに着いたのは、日をまたぎそうな12時少し前でした。

そして、昨日の日曜日、1日レッスンをさせていただきました。
高岡市立芳野中学校です。

前回お伺いしたのは、10月の『オータムコンサート』への「サプライズ訪問」でした。

その日のブログです。
http://schoolbandsupporter.blog24.fc2.com/blog-entry-907.html

その後、「日本管楽合奏コンテスト全国大会」でも、会心の演奏で「最優秀賞」を受賞し、3年生はたくさんの学びと達成感の中、引退していきました。

2学期の終わりごろ、顧問の先生と久しぶりに、ゆっくり電話でお話ししました。
新チームになっての歩み...どこのバンドでも同じですが、「ふりだし」に戻ってしまったような頼りなさや不安を感じながらも、少しずつ前に進んでいるようでした。

今練習しているのは、八木澤教司先生の『オアフ島の情景』です。
私がお勧めして、2学期後半から練習をスタートされました。

「2月に発表の機会があるので、『オアフ島』のレッスンをしていただけないでしょうか?」
先生のご依頼に、たまたま1月18日に空きが出たことをお話ししました。
ただし、前日は夕方までレッスンが入っているので、高岡には最終列車で入るスケジュールになるということも...
先生は、懇願してくださいましたが、私は、生徒さんたちに「レッスンを受けるか受けないか」を決めさせてくださいとお話しして電話を切りました。

2学期の最後の練習が終わる日、生徒さんたちは、「まだ田川先生に見ていただけるレベルではない。こんな状態でお呼びしたのでは失礼。また6月のように怒らせてしまうのでは。」と、先生の思いとは逆の思いを伝えて来たようです。

「こんなレベルだから教えていただくのだと、年明けに説得しようと思います」と先生はおっしゃっていましたが、私は、「説得はやめて、生徒さんに決めさせましょう。今の時点で受けたくないと言うならそれでいいじゃないですか。とりあえず、ホテルだけは予約しておき、列車の切符は買いませんから、直前に決めてくださってけっこうです。」

「本当に申し訳ないです。では、お言葉に甘えさせていただき、3学期になって生徒たちに最終結論を出させます。」

そして、正月明けの練習が始まり、3学期が始まった1月9日、先生からメールが届きました。

18日の田川先生のレッスンについて、はじめは、
・自分たちにレッスンを受ける資格はあるのだろうか。
・田川先生が求めているレベルにまで、自分たちができるのか。
・アンコンの練習をしながら、オアフ島もできるのか。
などの不安の声が2年生から聞こえていたのですが、2年生で話し合いを重ね、自分たちの「本当の想い」を伝え合っていくうちに、
・自分は1年生のときに、田川先生の『ひまわり15本』のレッスンを受けて、「部活が楽しい」ではなくて、「音楽が楽しい」と強く感じられたので、田川先生のレッスンを受けたい。
・田川先生が選んでくださった『オアフ島』だから、この曲の良さを教えていただき、そこから前に進んでいきたい。
・・・・・
そして、もっとも多かったのが、
・田川先生のレッスンは音楽以上に、人のとしての「生き方」を学ぶことができる。
・田川先生のレッスンを今の1年生はまだ受けていないので、1年生と一緒に田川先生のレッスンを受けたい。
という想いが次々にだされ、2年生1人1人、全員が、田川先生のレッスンの受けたいと、みんなの前で、自分の言葉で伝えていました。


休み中に、ひとりひとり考え、そして、冬休みや新学期の練習の中で、「このままではなく、一歩進みたい」という思いが込み上げてきたのでしょう。

「生徒たちが決めた結論です。多々失礼もあるかもしれませんが、どうかレッスンをお願いいたします。」
という先生からのお言葉に、私は富山に向かうことにしました。


(学校では、このようなことが起こり得ます。
「大人サイドの話」なら、こちらにもスケジュールの都合がありますから、「直前に決めてもいいです」ということはあまりしたくないことではありますが、そこを受け止めなければ、先生と生徒にとって「最高の時」にはなり得ません。
生徒指導や様々な生徒たちの状態や問題、今の時期ならインフルエンザや雪...何か月も前にご予約をいただいても、何かが起きて、状況が変わってしまう場合もあります。
やむを得ない状況によっては、私は「直前キャンセルもあり」というスタンスです。
学校のバンドというのは、大人の都合だけでは動かないものなのです。)


先週開催されたアンサンブルコンテストの高岡地区大会では、芳野中学校は昨年度の成績に比べて残念過ぎる結果になってしまったようです。
「レッスンを受けたい」と結論を出した後のアンコンの結果に、先生も生徒たちも、ますます自信を無くしての昨日でした。

私は、「こんな時こそ!」と思い、明るく元気に入って行きました。
ちょっと不安げな皆のあいさつも、やり直ししました。
「さあ、笑顔で! 今日は先生ではなく、君たちが決めて僕を呼んでくれたんだよね。うれしかったよ! さあ、もう一度、最高の笑顔で! でないと、悲しいなぁ...」
こんな「おまじない」にも反応できるのが救いでした。

「作り笑顔」かもしれない、「田川先生のために仕方なく」かもしれない。
でも、それすら出来ない状態だったら、ほんとに悲しいです。
みんなで、思い切り笑顔になって元気にあいさつです。

そして、レッスンのスタートは、たくさんたくさんコミュニケーションタイムをいただきました。

先生は、そういう「心の勉強」の時間も含めてのレッスンという考え方をしてくださるので、ありがたいです。

「田川先生に伝えたいこと」...発表のテーマはそれだけです。

えっ? 皆、何を話せばいいのか、困ってしまっていました。

「何でもいいんだよ。部活のことじゃなくても、真面目なことじゃなくても...こんな気軽な内容の時には、まずは、手を挙げてしまうこと。それから考えても遅くはないよ。」

第一ラウンドは、10人が手を挙げて話してくれました。

・昨日、部活が終わって帰ってから、友達と家族と一緒にスキーに行って、とても楽しかったです。ラーメン食べたし。
・昨日、姉と「早口言葉」の勝負して...「青巻紙、赤巻紙、黄巻紙」って。で、私は負けちゃいました。(そう、ではみんなで言ってみましょう! で、大爆笑。)
・私、最近、何かあちこちにぶつかるんですよ。さっきもドアにぶつかって...ヤバいです。」
・・・・

「あぁ、そんな感じでいいんだ」と、第二ラウンドも10人が発言。
その一人一人の話を、私は笑顔で真剣に聞きました。
もちろん、部員の皆も...時には大笑いしながら。

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そして、第三ラウンド。 「田川先生に伝えたいこと。部活編」です。
実は、これが私の本当の「ねらい」でした。


1日レッスンに入る前に、皆の前で、自分の思いを言葉にして吐き出してほしかったのです。

一瞬、挙手が鈍ってしまいましたが、私が第二ラウンドまでの時間を使って、「話しやすい雰囲気」を作ってくれたのだということを理解できるだけの心が育っていました。

少しずつ立ち上がり、それぞれの「思い」を真剣に語り始めました。

前向きな気持ちを語る生徒、ネガティブになってどん底のような気持ちを語る生徒、「私なんてこの部活では足手まといになっているだけ」とまで言う生徒も...
話しながら、泣き出す生徒もいましたが、話し終わるまで皆でじっと待ってあげました。

私は、どんな発言も、その子その子の思いだとしっかり受け止めながら、ゆっくりと話を聞いてあげました。
先生も、黙って私に任せてくださいました。

こうして、三ラウンドの中で、全員が自分から発言しました。
こんなことは、このバンドでは初めてのことです。
それだけでも、新チームはすばらしいじゃないかと私は思いました。

「人間、最後に自分を変えられるのは、誰ですか?」
「自分です。」
「そうです。自分を変えられるのは自分しかいません。そして、ひとりぼっちで変わるのは大変だから、周りの人たちが助けてくれるのです。しかし出来るのはお手伝いだけです。、顧問の先生も田川先生も仲間も、あなたたちの心の中に入って、変えることまではできません。自分を変えられるのは自分だけです。」

「自分を変えていきたいですか?」「はい!」
「今日も、自分で自分を変えたいですか?」「はい!」
「では、練習を始めましょう。今日のレッスンを通して、自分自身が変わったことを実感できるように、自分に向き合い、一瞬一瞬、自分を変えていきなさい。」「はい!」

これなら大丈夫。
私は、安心してレッスンを始めました。
ここにたどり着くまで時間がかかりましたが、一方的にこちらから偉そうに訓話だけしても入っていきません。
まず、生徒たちの思いを受け止めてあげなければ...

先生も、音を出して練習する以上に大切な時間であることをわかってくださっていました。
こういう信頼関係は、一朝一夕で出来たものではありません。
初めて先生と出会ったその日からこれまでの「長い時間」と「お付き合いの本気さ」が作ってくれた「信頼」です。
そんな「信頼関係」は、当然、生徒たちに移ります。

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「基礎合奏」もコミュニケーションを大切にする方法で進めました。

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チューニングリレーも、当然仲間の音をよく聴きながら。

スネアでテンポを取っているのですから、指揮を見る必要はありません。
お互いに方向を変えて、見合い、聴き合い、一緒に音を作り上げている実感と幸せを感じながら進めました。

『オアフ島の情景』は、シンプルですが、様々な学びを得られる曲です。
何よりも、「人を優しくする曲想」を大切に表現したいものです。

お昼をはさんで夕方まで、私は汗をかきながら、生徒さんたちとこの曲に向かい合いました。

歌ってみよう、身体で表現してみよう...
初めてこのバンドに伺った時、生徒さんたちは、かなりの抵抗感があったことを思い出しました。

今は、すぐに歌い出します。すぐに身体が動き出します。
ちょっと足りない時に、「今、自分を変えようとしている?変わった自分に気づけている?朝、決心したよね!」と思い出させると、ぐんとよくなります。

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途中途中、私は、何度も励ましの言葉をかけました。

「君たち、さっき『どん底』みたいなこと言っていたよね。もしほんとにそうなら、安心しなさい。どん底ってことは、今より落ちることは無いんだから、後は上がっていくだけ。うれしいね!もうすでに上がり始めているよ。さっきよりずっと上手になっている。」

「確かに、このチームには引退した3年生のようなスタープレイヤーは、今はいないかもしれないけれど、みんなで作っているサウンドは決して悪くないよ。いい意味で飛び出る人はいないけれど、悪い意味で飛び出る人もいない。それはそれでいいことなんだ。」

「歌でハーモニーを取って、これだけ歌えた年はあったかなぁ。すばらしいよ!」

「足手まといだとか、自分なんていない方が...なんて思って出している音が良くなるはずはない。そういうマイナス思考の音が迷惑なんだよ。このチームに必要でない人間なんかひとりもいない。君たちみんなの音が必要なんだよ!そう思って出している音はどんどん良くなる!」

「君たちは『微力』かもしれない。でも、『無力』ではない。『微力』と『無力』は大きな違いだ。微力なら、なおさらひとりひとりが持てる力を全部出せ。引いちゃだめだ。ひとりひとりは微力でも、みんなで力を合わせれば、大きな力になるんだから!」


朝の不安げな姿は、すっかりなくなっていきました。

「私は自分の音が嫌いです」と言って泣いていた生徒が、身体全体を使って美しい旋律に心を込め、精一杯演奏していました。
以前はほとんど発表しなかった生徒が、手を挙げて場面のイメージを話していました。 

そして、『オアフ島の情景』は表情豊かな雄大な、そして、優しい演奏に変わっていきました。

先生も、途中で、「今の部分、聴いていて泣きそうだったぞ。こんな感動的な表現ができるんだなぁ、みんな!」と、本気で褒めていらっしゃいました。

(生徒さんたちの熱い姿と変容に見とれて、私の指導写真を撮り忘れてしまわれたほどでした(笑))

身体も心も頭も、常に全力投球のレッスンが1日続きました。


お昼は、あえて「コンビニのおにぎり」にしていただき、用意していただいた「お皿」に生徒さんたちからの「おすそ分けプレート」!
(今だから言えることですが、教員時代にも、時々やってました。ごめんなさい。)

「さあ、自分が一番好きで、一番食べたいおかずを、田川先生と橘先生にほんのちょっとずつおすそ分けだよ!」

これも、コミュニケーションのひとつなんです。

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次々に集まって、お皿の上を豪華にしてくれました。 
みんなありがとう!



こうして、1日のレッスンが終わり、お別れの時になりました。

「今日、自分で自分を変えられましたか?」「はい!」
それぞれに、自分の中の変容を話してくれました。

意味のある1日になってよかったです。

「田川先生のレッスンを受けたい」と決めた君たちの決断は正しかったのです。

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まだまだつまずくこともあるかもしれません。
でも、大丈夫!

自分の良さ、自分たちの良さに気づくこと。
自分で自分を変えようとすること。
「自分が出来たこと」を、自分でちゃんと認めてあげること。

人と自分を比べるのではなく、昨日の自分と今日の自分を比べよう。

そして、音楽を楽しもう!

「あの頃は苦しかったけれど、今日このコンサートに来てくださったお客様の温かい心に触れて、やっぱり頑張ってきてよかったと思いました。」
今年の『オータムコンサート』の後、そんな風に作文に書いている自分をイメージして!

君たちは、「微力」だとしても、「無力」ではない。

大丈夫! 大丈夫!

がんばれ!



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玄関で歌ってくれたアカペラの四部合唱...みんなの勇気を感じる歌声でした。
しっかり練習して迎えてくれたのですね。 ありがとう。

「先生、ありがとうございました。」 ぎゅっと僕の手を握ったまま、なかなか離そうとしなかった君の気持ち、しっかり伝わったよ。 うれしかった。

今日の皆の明るい輝きを心に焼き付けて、いつも応援しているから。

がんばれ、芳野中学校吹奏楽部のみんな!



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教室の窓から見える立山連峰...心も大きくなります。



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| | 2015-01-19(Mon)20:03 [編集]


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